アルコバサ修道院のふたり
アルコバサは、ポルトガルの中西部、首都リスボンの北約120km、
コインブラの南約100kmにある門前町アルコバサにある修道院である。
リスボンのセッテ・リオスバスターミナルからバスで2時間で到着する。
ナザレからアルコバサまで20分、バターリャから30分で行くことができる。
ナザレの東約14km、アルコア川とバサ川の交わる場所に小さな町のアルコバサがある。
ポルトガルの宗教建築物で最も重要なサンタ・マリア・デ・アルコバサ修道院は、
ポルトガルを建国したアフォンソ・エンリケス1世がイスラム軍との戦勝に感謝し
1178年に建造した、簡素・簡潔を基本とするシトー派の修道院で、
正面の幅が221mもありポルトガル最大の規模。
ポルトガルの独立を象徴する建築物であり、1989年ユネスコの世界遺産に登録された。
建築は、ロマネスクからゴシックへの過渡期の様式である。
勇敢王といわれたアフォンソ4世の子で、14世紀の国王であったペドロ1世と
姫コンスタンサの侍女イネスとの悲恋物語は有名であるが、
この二人の葬られた一対の石棺がマヌエル様式の礼拝堂に安置されている。
この石棺には、繊細で美しい装飾彫刻が施され、
ポルトガル・ゴシック芸術の最高傑作といわれている。
そのアルコバサ修道院の入り口にいたふたりである。
「ペドロとイネスの悲恋物語、悲しいわね。」
「そうだね。」
「身分の差が障害だったのかしらね。」
「それだけじゃないと思うけどね。」
「姫の侍女だったからかな。」
「それもあるけどね。」
「ふたりの石棺の装飾がすてきよね。」
「向かいあわせに置かれているよ。」
「天国で幸せになっているかしら。」
「ぼくは、君といっしょの今が幸せさ。」
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