|    テージョ川岸のふたり   
ポルトガルの首都リスボンは、大西洋に注ぐテージョ川の河口から約12km上流の右岸に位置するヨーロッパ大陸最西端の首都である。
 「7つの丘の街」と呼ばれる起伏が激しい土地である。
 
 ロシオ広場から、アウグスタ通りを通り、勝利のアーチを抜けると
 広々としたコルメシオ広場が広がっている。
 リスボンの海の玄関口であるコメルシオ広場は、
 1755年の大地震で破壊されたマヌエル1世の宮殿があったことから、
 別名テロイソ・ド・パソと呼ばれている。
 1908年にはカルロス1世と皇太子が暗殺されるなど、
 さまざまな歴史の舞台ともなった。
 
 コルメシオ広場の南側の海のようなテージョ川岸には、
 大勢の人たちが、集まっていた。
 小さいが、砂浜も作ってあるので、子供たちが遊んでいた。
 暑いので、涼しさを求めて水辺にくるのであろうか。
 
 そのテージョ川岸にふたりがいた。
 まぶしい太陽の光に素肌が輝いていた。
 「コルメシオ広場に海岸があるなんて知らなかったわ。」
 「海のようなテージョ川や対岸を眺めるのに最高な場所だよ。」
 「こんなに暑くなるのだったら、水着も持ってこればよかったわ。」
 「泳ぐつもりかい?」
 「そうよ。だめなの?」
 「みんなの視線を集めそうだから、やめてよね。」
 「なんでよ。」
 「君は僕だけのものだからさ。」
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