トマール修道院のふたり
リスボンのサンタ・アポローニア駅から鉄道で約2時間。
セッテ・リオス・バスターミナルからバスで1時間45分で到着する。
ポルトガル最大の修道院がそびえる町がトマールである。
1160年に、戦略上の拠点として、トマールに城塞が建設された。
ナバオン川に近い丘の上に建設された城塞は、城壁と地下室を兼ね備えていた。
キリスト教修道院の地下室は、城塞における住居と司令塔の役割を果たし、
テンプル騎士団によって紹介されたポルトガル最古のものである。
1312年、全ヨーロッパ世界で、テンプル騎士団の活動が禁止された。
しかし、ポルトガルで活動していたテンプル騎士団のメンバーを中心に、
当時の国王ディニス1世は新たに、キリスト騎士団を結成した。
1357年に、トマールに移ったキリスト騎士団がここを本拠地とした。
トマールの町が建設された時点で、ほとんどの住民は、この要塞の中に
居住していたとされる。
トマールのキリスト教修道院は、ロマネスク建築、ゴシック建築、ムデハル様式、
マヌエル建築、ルネサンス建築といった様々建築様式が融合した建築物である。
そのトマール修道院の階段にふたりがいた。
「あなた、ゆっくりと歩いてね。」
「わかってるよ。」
「私を置いていかないでね。」
「わかってるよ。」
「ひとりで取り残されないか、心配なのよ。」
「大丈夫さ。天国で待っているよ。」
「あら、天国に行けるつもりなのね。」
「・・・」
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