リスボンの泥棒市のふたり
リスボンは、大西洋に注ぐテージョ川の河口から約12km上流の右岸に位置する、
ヨーロッパ大陸最西端の首都である。
「7つの丘の街」と呼ばれる起伏が激しい土地である。
バイシャ地区の東に広がるのが、リスボンで最も古い街並みを残すアルファマ地区である。
「アル」と始まる単語はアラビア語が語源だ。
迷路のような路地や白壁の家々はかつてのイスラムの影響を色濃く残している。
「リスボンの下町」と呼ばれている。
観光名所を訪れるだけでなく、ただぶらぶらと歩き回るだけでも楽しい町である。
サン・ヴィセンテ・デ・フォーラ教会は、ふたつのルネッサンス様式の鐘楼を持っている。
1147年にアフォンソ・エンリケスがイスラム教徒からリスボン奪回を記念して造られた。
教会の横に修道院が造られている。
内部にはブラガンサ王朝の霊廊がある。
回廊のアズレージョが美しい。
サン・ヴィセンテ・デ・フォーラ教会の裏手にサンタ・クララ広場がある。
毎週火曜日と土曜日に露店市場(のみの市)が開催される。
通称「泥棒市」と言われているが、盗品の市ではない。
新品、中古品からガラクタまで何でもそろっている。
ときおり掘り出し物も見つかるので、土曜日の午後にはすごい人出になる。
その泥棒市にふたりがいた。
衣料品やアクセサリーの店を彼女は出店していた。
彼は、犬といっしょに彼女に会いに来ていた。
「あら、元気だったかしら。」
「もちろんさ。君に会うために万全の体制さ。」
「ワンちゃんも元気そうね。」
「いたずらばかりするんだ。困ったものさ。面倒みきれないよ。」
「そんなこといったら、かわいそうよ・・・」
こんなこと話していると、茶色の犬が彼女の店の紫の布にオシッコをかけた。
「こら!このクソ犬!ばかやろう!」
「なんてことするの。ひどいわ。もう、こないでほしいわ。さよなら。」
「なんてことだ・・・」
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(会話の内容は不明だが、犬がオシッコをかけたのは本当のことである)
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