アヴェイロの運河横の公園のふたり
ポルトからアヴェイロまで近郊列車で1時間程である。
コインブラからアヴェイロまで列車で1時間程である。
ポルトとコインブラの間にあるのがアヴェイロである。
入り組んだリア(潟)が内陸に大きく食い込んでおり、自然の良港として繁栄してきた。
現在の主な産業は漁業と牧畜である。
新潟で取れる海草が埋立地の地味を肥やしたため、酪農が盛んになったという。
ローマ帝国が支配する時代から豊かな漁業と牧畜の町であった。
中世の時代には塩と鱈の生産で繁栄し、人口はポルトを凌ぐ時期もあったらしい。
1575年、猛烈な大暴風雨で海への水路が完全にふさがれてしまう。
行き場を失った腐った水は疫病をも発生させて富も人口も一瞬に失ってしまった。
1808年の暴風の影響で一旦ふさがったはずの水路がまた開いたのである。
寒村になり果てていたアヴェイロに塩田、海藻から造る肥料産業、漁業がもどった。
町は再び活気を取り戻すのである。
その肥料用の海草を集める船をモリセイロと呼ぶ。
弓のように反り返った軸先を持ち、船体は、極彩色の絵で美しく飾られている。
毎年、この船の絵のコンテストがあるという。
海に近いアヴェイロでは昔から塩作りが盛んで、特に「塩の花(Flor de Sal)」はアヴェイロの特産品として知られている。
この塩の花、海水を塩田に引き、天日干しした海水の表面にできる大き目の塩の結晶を手作業で集めたものである。
粒が大きくて深い味わいの塩で有名である。
街の中にも塩田の歴史を物語るペイントや銅像などがいくつも見られる。
現在では塩作りをしているところも減ってきている。
モリセイロが浮かぶ運河の横の公園のベンチにふたりがいた。
「観光船がたくさん運航しているのね。」
「観光船でなくて、モリセイロだよ。」
「あら、モリセイロは海草を運んだ舟なのでしょ。」
「そうだよ。今は、観光船になったんだよ。」
「モリセイロの舟の絵はきれいに描かれているわね。」
「まあ、君の美しさにはかなわないけどね。」
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