エル・シシュ・ファクトリーのふたり
リスボンは、大西洋に注ぐテージョ川の河口から約12km上流の
右岸に位置する、ヨーロッパ大陸最西端の首都である。
リスボン中心部からテージョ川沿いに6kmほど西にあるのがベレン地区である。
15世紀初め、ヨーロッパ列強が争っていた時代に、ポルトガルが悠然と道の海へと乗り出した。
輝かしい大航海時代の幕開けである。
エンリケ航海王子は海洋国ポルトガルの創始者となった。
ベレン地区には、大航海時代を代表する歴史的建築物が残されており世界遺産に登録されている。
ベレン地区に行く途中の4月25日橋のたもとに19世紀に紡績工場だった跡地が最先端のスポットのエル・シシュ・ファクトリーになった。
デザインや映像などさまざまな分野のクリエーターたちがアトリエを構えたのをきっかけに始まった。
ショップ、ギャラリー、カフェ、レストランが立ち並ぶクリエイティブな空間である。
その一角にある「リグラリア・レル・デヴァガール」は世界の美しい書店ベスト20に選ばれたユニークな本屋である。
空中を飛ぶ白い自転車の天使がおもしろい。
日曜日の午後にはサンデーマーケットが開催され、賑わっている。
おしゃれな布で作った袋物など売っている店があった。
手作り品が出品できるところが、露店市場のいいところでもある。
その店の店番をしているふたりがいた。
「最近は、エル・シシュ・ファクトリーもすっかり有名になって賑わっているわね。」
「このマーケットができたときは、お客さんがくるか心配だったけどね。」
「売る場所ができてうれしいわ。」
「そうだね。君の作品が売れるのがうれしいよ。」
「売れたお金で、ワインを飲むつもりでしょ。」
「ははは。ばれたか。肩でももみましょうか?」
「いつも誤魔化すんだから・・・」
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