ポルトのファドライブのふたり
リスボンからセッテ・リオス・バスターミナルから高速バスで3時間30分程、
または、オリエンテ駅から特急列車で3時間でポルトに到着する。
リスボンから北へ約300km、ドウロ川北側の丘陵地に築かれた、起伏の多い街である。
人口約23万人、この国の商業の中心として栄えてきた。
フェニキア人やローマ人の時代から続く歴史が織り込まれた町並である。
ポルトは、カレ(ギリシア語で「美しい」の意味)と呼ばれており、
のちにポルトゥス(港)という言葉が加わって、ポルトゥス・カレとなり、
これがポルトガルという国名の起源となった。
ファドは、ポルトガルに生まれた民族歌謡である。
ファドとは運命、または宿命を意味している。
このような意味の言葉で自分たちの民族歌謡を表すのは珍しい。
1820年代に生まれ、19世紀中ごろにリスボンのマリア・セヴェーラの歌によって現在の地位を得た。
ファドは、主に「Casa de Fado」と呼ばれるレストランなどで歌われる大衆歌謡である。
主にポルトガルギター(ギターラ)と現地ではヴィオラと呼ばれるクラシック・ギターで伴奏される。
日本では、ファドは女性が歌うものとの認識が強いようだが、実際には性別に関係なく歌われる。
また、ファドは暗く悲しいものだという誤解をもって紹介されることも多いが、我が町を賛美したり、
街のうわさ話などを題材とした陽気なファドも数多くある。
2011年にはユネスコの人類の無形文化遺産の代表的な一覧表に記載された。
歌手アマリア・ロドリゲス(1920~1999)が、女優でありファドの女王といわれている。
国民的歌手として国内外で知られ、その人気は死後も衰える兆しを見せない。
ファド専門レストランでは、夜9時過ぎから始まることが多い。
夜遅いので、なかなか見ることができなかったが、6時からのライブがあった。
レストランでなく、ギターラ専門楽器店のライブである。
そのファドライブの出演するふたりがいた。
「たくさんのお客さんが来てくれるといいわね。」
「大丈夫さ、観光客がたくさん見に来るさ。」
「夕方のライブというのは、当たったわね。」
「そうだな。夜遅いのは、健康に悪いしな。」
「私の歌は満足してもらえるかしら。」
「大丈夫さ。アマリア・ロドリゲスの再来と思っているからさ。」
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