サン・ベント駅のふたり
リスボンからセッテ・リオス・バスターミナルから高速バスで3時間30分程、
または、オリエンテ駅から特急列車で3時間でポルトに到着する。
リスボンから北へ約300km、ドウロ川北側の丘陵地に築かれた、起伏の多い街である。
人口約23万人、この国の商業の中心として栄えてきた。
フェニキア人やローマ人の時代から続く歴史が織り込まれた町並である。
ポルトは、カレ(ギリシア語で「美しい」の意味)と呼ばれており、
のちにポルトゥス(港)という言葉が加わって、ポルトゥス・カレとなり、
これがポルトガルという国名の起源となった。
サン・ベント駅 Estacao de Sao Bento は、20世紀の初め、修道院の跡地に建てられた駅である。
アズレージョ(装飾タイル)がみごとなポルトの玄関口である。
ホールの壁を飾るアズレージョはジョルジェ・コラコが1930年に制作した。
ジョアン1世のポルト入城など、ポルトにまつわる歴史的なできごとが描かれている。
ジョルジェ・コラコ Jorge Colaco は、ポルトガルを代表するアズレージョ画家のひとりである。
おもな作品には、ポルトのイルデフォンソ教会の外観のアズレージョなど。
サン・ベント駅構内のアズレージョは駅とは思えないほど、立派である。
セウタ攻略を描いた場面ではエンリケ航海王子も描かれている。
そのアズレージョの美しい駅構内にふたりがいた。
「別れる時が辛いわ。」
「すぐに戻ってくるさ。」
「ちゃんと働いてね。」
「わかってるさ。」
「そろそろ、家族に会ってもらいたいから。」
「プレッシャーだなあ。がんばるよ。」
|