ナザレの海岸のボートのふたり
リスボンのセッテ・リオスバスターミナルからバスで1時間50分で到着する。
コインブラからも1時間40分で到着するので中間地点である。
列車もあるが、駅から町まで遠いのでバスの方が便利である。
ナザレの名は、8世紀に西ゴート王ロドリゴがロマノという僧を供に
この地までやってきたとき、彼が携えていたマリア像がはるかイスラエルの
ナザレのものだったことに由来する。
独特な風習と服装で知られ、また夏にはポルトガル国内はもとより
ヨーロッパ中から訪れるバカンス客で砂浜は埋め尽くされる。
ナザレの伝統的民族衣装は、現代にも伝わっている。
男性は、チェックのシャツ、腰に黒い帯を巻きつけて留める幅広のズボン、
黒い縁なしの帽子。
既婚の女性は、7枚重ねの短いスカートにエプロン、頭に巻いたスカーフとスリッパ。
未亡人は、黒づくめの服装。
それらが、伝統的なスタイルである。
現在、男性でこの伝統衣装を着ている人は、ほとんどいない。
女性も大半がお年寄りであり、若い人は、祭りのときくらいしか身に着けないのである。
代々受け継がれてきたナザレの民族衣装、引き継いでほしいものである。
ナザレの西側の海岸は、大西洋である。
夏のシーズンになると海岸は大勢の人であふれる。
まだ5月だが、暑い日が続いている。
さすがに泳いでいる人はいないが、日向ぼっこをする人も多いのである。
海岸にボートが置いてあった。
オブジェ用なのかもしれない。
長い1日が終わりかけており、ボートの中にふたりがいた。
この時期の日の入りは9時過ぎである。
「もうじき太陽が落ちるから、カメラの用意をしないとね。」
「そうだな。夕焼けがでるといいな。」
「カメラはこれでいいかしらね。」
「大丈夫だと思うよ。」
「きれいな夕焼けになるといいわね。」
「どんなにきれいな夕焼けでも、君の美しさには負けるけどね。」
|