ベレンの塔近くの生ジュース店のふたり
リスボンは、大西洋に注ぐテージョ川の河口から約12km上流の
右岸に位置する、ヨーロッパ大陸最西端の首都である。
「7つの丘の街」と呼ばれる起伏が激しい土地である。
リスボン中心部からテージョ川沿いに6kmほど西にあるのがベレン地区である。
15世紀初め、ヨーロッパ列強が争っていた時代に、ポルトガルが悠然と道の海へと乗り出した。
輝かしい大航海時代の幕開けである。
エンリケ航海王子は海洋国ポルトガルの創始者となった。
ベレン地区には、大航海時代を代表する歴史的建築物が残されており世界遺産に登録されている。
ベレンの塔は、16世紀、テージョ川を行き交う船を監視し、河口を守る要塞として立てられた見張り塔である。
正式名を「サン・ヴィセンセの塔」という。
マヌエル1世の命を受けた、フランシスコ・デ・アルーダが設計、1519年に完成した。
大航海時代、長く危険な航海を終え無事に帰り着いた船乗りたちを温かく迎い入れる故郷のシンボル的存在であった。
高さは35mあり、軍事的に機能した後は、船の通関手続きを行う税関や電報局に転用されていった。
マヌエル様式を代表とする建築のひとつで、レースを施した純白のドレスをまとった貴婦人にたとえられることもある。
司馬遼太郎は、ドレスの裾を広げた姿にたとえて「テージョ川の公女」と賞賛している。
ベレンの塔から発見のモニュメントに行く途中で、生搾りジュースの店があった。
自転車をこいだ力でジューサーをまわすのである。
自分で作ったという手作り感があり、おもしろいシステムである。
そこで、自転車をこいでいるふたりがいた。
「がんばってこいでね。おいしいジュースを作ってね。」
「わかっているよ。がんばるよ。」
「オレンジ100%のジュースは濃厚でおいしいと思うわ。」
「オレの分を取っておいてくれよ。」
「そればどうかしら。自分の分は別にこいで作ってね。」
「え~~ そんな~~~」
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