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ポルトの伝統的本屋『レロ・イ・イルマオン』&アズレージョの教会は、こちらからどうぞ!
☆ポルト8の説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
リスボンから北へ約300m、ポルトガル第2都市ポルトである。
人口約30万、ポルトガルの商業の中心地である。
名実ともにポルトガル発祥の地がポルトだといわれている。
14〜15世紀には良港であることを活かし、海外進出の拠点となった。
リスボンから、飛行機で所要55分、1日10便程度。
サンタ・アポローニア駅からAPまたはICで2時間45分〜3時間10分、1日15便程度。
セッテ・リオ・バスターミナルから約3時間半、1日20便程度。
「ポー君の旅日記」 ☆ 聖ジョアン前夜祭のポルト9 ☆ 〔 文・杉澤理史 〕 ≪2008紀行文・32≫ 6月23日(月)の午前中は、〈ポルト〉から列車で1時間20分の祈りの町と言われている〈ブラガ〉で、
[サン・ジョアン祭の前日祭]を堪能した。
[ボン・ジェズス]というキリスト教の巡礼地を控えた宗教の町に受け継がれてきた民族衣装に包まれ、
素朴で温かみあふれた住民の踊り子たちが懸命に舞い踊る姿の美しさに、惚れ惚れしたものだ。
(「ボン・ジェズス」については、「こちら」をクリックしてくださいね。 どうぞ!!) 《郷に入っては》 ポルトガル各地を2001年9月22日(11日前に、9・11ニューヨーク同時テロ事件)から、
首都リスボンを起点に歩き回って、今回で6回目の撮影取材旅である。
「旅日記」形式をとってポルトガルの情景を伝えて来たけれど、ツアーでなしに個人旅でも
一握りの度胸さえあればポルトガル旅を楽しめることを判って欲しかった。
しかし、伝える情報内容が私的傾向に流れやすいのは、ポルトガル語をろくすっぽ喋れない、
聞いても判らない、運と勘と度胸のばったり旅が基盤のためだ。
したがって伝達手段としては、我らの行動を日記風に描くしかない。
「郷(ごう)に入(い)っては郷に従う」の一日二万歩ケチケチ撮影取材旅ではあったが、
それなりの〈我流旅〉を充分楽しんで来られたと思う。 16時50分、満員に膨れ上がった乗客を乗せたブラガ発の列車は、1時間20分かけてポルトのサン・ベント駅に着いた。
前夜祭に参加する人々で駅構内は人の群れだった。駅前からの群衆が、急坂をドウロ川に向かって下っていた。
ブラガは晴れていたが、ドウロ川上空には、
楽しみにしているポルトの[サン・ジョアン前夜祭]が案じられる薄い雨雲が垂れ込めていた。 そのドウロ川沿いにあるレストラン街[カイス・ダ・リベイラ]は世界遺産にも指定されており、
前夜祭に集まる市民はもとより観光客で毎年大混乱すると聞いている。
今夜12時、目の前に迫る[ドン・ルイス一世橋]上空を彩る花火が目的なのだ。
花火を見た後は、ドウロ川岸を海までぞろぞろ6キロメートルほど下り、
大西洋に昇るでっかい太陽に向かって魔よけの祈りをする慣例行事がある。
差し詰め、日本人なら両手を合わせてであろうが、ポルトガルはカトリックの国だ、両手を組んでの祈りだろう。
でも、最近は大西洋まで歩く人々が少なくなったとも聞いていた。 そんなわけで、押し合うほどの大混乱の中に入っての撮影は不可能であった。
我らは、ドン・ルイス一世橋の上流にある[インファンテ橋]近くの、炭焼きイワシ祭りで賑わう通りに行くことにしていた。
今回、定宿にした安宿[サン・ジョルジェ]は、サン・ベント駅にも近く、
その会場にも近いことで、相棒が名古屋出発前に決め予約した。
スケジュール立案は相棒の特技の一つであった。 「けいの豆日記ノート」 《三種の神器》 サン・ベント駅から石畳の急な坂道を上って行くと、バターリャ広場がある。
今朝、駅の反対側の宿から坂道を上って来たその広場には人影もなかったが、
その広場に青黄青白緑桃色のおもちゃを山積みにして売るおばさんがいた。
おもちゃは、プラスティックの蛇腹ハンマーのように見えた。
『ピコピコハンマーだよ』と相棒は吐き、ピコピコを売るおばさんをカメラに収めた。 サン・ジョアン祭には、この「ピコピコハンマー」と、鉢に植えたこんもりした緑の葉っぱの香りがキツイ「マンジェリコ」、
それに「長い茎の先に咲くニンニクの花」が、祭りに欠かせない「三種の神器」である。
この三種の神器が、サン・ジョアン祭と、どんな深いかかわりを持ってきたかの情報は明日12時に、
2年振りに再会するポルト在住30年余りの青森県弘前生まれYukoさんから聞いていたが、細部は忘れた。
でも、三種の神器は魔よけの神器であった。 振り返ると、バターリア広場の一段高く盛り積みされた上に立つ、小振りな教会が見える。
その正面壁はアズレージョ(タイル画)が施され、その美しさは凛(りん)とたたずむ少女のようだ。
少女の名は、[サント・インデフォンソ聖堂]といった。
この教会は、ポルトガルにある教会の中でもたたずむ姿が、ポーの心に沁み込んでいた。
今まで出合った大航海時代の財産で建てられた、教会・カテドラル・修道院の中でも、
両手を広げた10本の指の一つに入る、忘れられない可憐な教会であった。 ポルトガルの旅を続けて来て、ポーの心を溶かしたものが3つある。
それは、各地で出合った、大航海時代に築いた教会・カテドラル・修道院などの雄姿であり、
ポルトガルアズレージョ(装飾タイル画)である。
それに、日本の鎖国を解く初めての南蛮からの異邦人であったポルトガル大航海時代の勇者たちに対する敬愛であった。 たとえば、1543年種子島に漂着し〈鉄砲伝来〉として知られる勇者たち。 「けいの豆日記ノート」 《洗濯物が消えた・・・》 バターリア広場から坂道を下り、いつも立ち寄る裏路地の小さなスーパーマーケットに向かった。
路地に入ると相棒が足を止め、つぶやく。『洗濯物が干してないね〜』と。
確かに色とりどりの干し物が舞う、何時もの景色がなかった。
スーパーマーケットで、水1.5リットル(0.6ユーロ)、白ワイン700ml(1.65ユーロ)、
オレンジ(0.5ユーロ)を買った後、別の裏路地を通ってみたが、どの裏路地からも洗濯物が消えていた。 そして、表通り出た瞬間、その理由はすぐに割れた。
表通りの両サイドの歩道脇は、一般家庭の駐車の行列である。
ポルトガル各地にはほとんど駐車場がない。だから、道路が駐車場である。
特にサン・ジョアン祭の前夜祭は郊外から車で来ても止める場所がない。 その駐車された車のまえの歩道で、なんか所も煙が立ち上がり魚を焼く香りがした。
一般家庭の今夜の祭りの〈おごっつお〉イワシの炭火焼き料理であった。
そのイワシ焼き場が、路上であった。
この立ち昇る煙、この魚臭い煙が洗濯物に沁み込んだら、たまったものではない。
洗濯物が消えていた理由(わけ)は、単純であった。 「けいの豆日記ノート」 《幸せを呼ぶ、ピコピコ音》 宿に寄り、買い物を置き、トイレをすませ、再び宿を飛び出した。
トイレはまめにチャンスがあったらすませておくことだ。
旅先での鉄則の一つである。
午後8時、曇り空のため何時もより明るさに欠けていたが、まだ夜の時間帯ではない。
しかし、寒さが足元からにじり寄って来た。ジャンパーを着込んで、リックを背負った。 宿から更に坂道を下る。
歩道でU字型坑に網をのせ、炭火でイワシを真っ黒に焼く家族が撮影する相棒に声をかけて来た。
「ジャポネーザか、食べるかい、うまいぞ!」50代のメタボなおじさんだった。
「いいんですか、いただきます!」郷に入っては郷に従う、素直な相棒であった。
ジュウジュウ焼き音が鳴るイワシに、レモンを掛けて渡され、それに食らいつく相棒。
おじさんの笑みが弾けた。
サルディーニャシュ アサーダシュの喰い方が上手いね!と、手を握って親指を立てた。
ボン!(グッド!) 郷に従い、それがきっかけで、いい写真が撮れた。 『物価が安いと言っても、8年前に比べれば、イワシも高くなったよね。でも、塩焼きはオイシイなあ』
確かに、8年前は町の食堂で食べた焼きイワシ、一皿5匹で100円もしなかったが、
先日リスボンの食堂で食べた時は、一皿5匹で500円もした。
消費税が上がったからだろうか。日本のようにすべての品に均一5%ではない。物によって消費税が違うのだ。
20パーセントもするものがあるらしい。 目の前を歩く、子供連れの家族がいた。
大きな段ボール箱からピコピコハンマーを取り出し、青年が家族に渡す姿を見た。
相棒は、機敏であった。青年の前に立った。
赤いピコピコハンマーを貰った。青年はポーにも青いピコピコをくれた。
貰ってもいいのかな〜、とは思ったが、ありがとう!とオブリガード!を声に出して、頭を下げた。
青年は微笑んでくれた。
それに、誰の頭を叩いてもいいんだよ、軽くね、と自分の頭を強く叩いて、目が回った素振りをしておどけた。
いい青年である。そばで、相棒のシャッターが鳴っていた。 ピコピコハンマーで打たれると、その軽やかなピコピコ音が魔よけになるのだ。今夜は無礼講だ。
沢山打ち鳴らそうとポーは思う。人の為になるのだから・・・。
バスでは何度も通った2002年にできたインファンテ橋に向かうため、下って来た通りから右折した。 「けいの豆日記ノート」 《これが、前夜祭であった》 角を曲がったら、そこは、煙の世界であった。思いっきり炭焼きイワシに喰らいつき、
地元ポルト産のポートワインを堪能する人々であふれていた。
通行止めになった道路いっぱいにイワシを焼く店が何軒も並ぶ。
炭火で焼くのはほとんどがイワシだが、チキン丸ごとや大きなピーマンの輪切りもある。
盛り皿には10匹ばかりのイワシが並べられ、その上にピーマンが円を描いて飾られる。
これで一皿8ユーロぐらいか。大きな盛り皿を持って少年が客に運ぶ。1年に1度の家族総出の稼ぎ時だ。 長いテーブルが並び椅子がひしめく。
家族もカップルもチョンガも皆いっしょくたんで会話をし食べ、サン・ジョアン前夜祭を楽しんでいる。
イワシを焼く煙が風向きで押し寄せて来る。顔も髪も服も、煙臭く魚臭くなっているに違いない。
でも、年に一度の待ちに待っていた前夜祭だ。この臭さが魔よけなのだ。
会話の間、飲む間に、ピコピコハンマーが頭上を襲う。
ピコピコピコピコと音が切れ目なく響いている。
ポーもピコピコと青年に叩かれ、それがご縁で赤ワイン一杯ゴチになる。
その返礼は勿論、ピコピコハンマーで青年の頭上をピコピコ。魔よけ魔よけと、笑って返した。 ポルトガルに来たら、ポルト産、マディラ産、シェリー産ワインは見逃せない。
ポーはワイン通ではないが、〈VINHO DO PORTO・LAGRIMA〉の白(19.5% vol)が好きだ。
舌触り、コク、喉越し、風味、鼻腔に溶ける香りがいい。
特に、郊外の食堂で飲む銘柄もない地酒(ワイン)がうまい。安くて!オイシイからだ。 撮影時には、約束の赤い帽子でと決めていた。その相棒が人混みの中で目立っていた。
特に今日は赤い暖房ジャケット姿で撮影しているのでボディガードマン役にはありがたい。
見逃す心配がないからだった。
『イワシは撮った。他を見よう』コンタクトレンズがイワシの煙でやられたのか、目をしょぼつかせて言った。
子供たちの声に引かれて行くと、小さなメリーゴーランドがあった。
煙の中にいるより子供たちにとってはこっちの方がいいに決まっている。
常設ではなく祭りのために来た移動メリーゴーランドのようだ。 子供たちの笑顔の傍には必ず家族の眼がある。父親が子供に手を振っている。
ポルトガルでは片田舎であっても幼稚園や低学年校の登下校時、必ず家族の姿がある。
子供に何かがあってからでは遅いのだ。
日本のように何かがあった時だけの守りではない。
毎日毎日、何年も何年も、それが当然の慣習である。
これが辛抱強いポルトガルの家族愛なのだ。
どうも、日本国民は、どこかいつも何かにつけても、脇が甘く感じられてならない。
テレビドラマ【相棒】の主役、右京さんのような、先を見通す熱い配慮が必要だ。
亀山くんは、まさに、その日本人役を演じてくれていた。 「けいの豆日記ノート」 《花火》 少年が集まるゲーム店もあった。〈マトラキーリュス〉というサッカーゲーム機だ。
サッカー好きなお国柄、8台あるが満員だった。
2人づつ2組に分かれ、サッカー人形がついたバーを手で回してボールをゴールに打ち込む。
単純なゲームだが、これがなかなか難しい。熱を帯び選手になりきり、クソーなどと吐く。
クソー表現はポーの即訳(そくやく)である。
23時近く小雨が降り出した。雨でカメラが故障したら、後の記録が撮れなくなる。
宿に戻ることにした。
気づけば夕飯を食べていなかった。焼きイワシをポーは食べていない。
相棒は1匹ゴチになったが。いつものことだが・・・。 テレビ画面がサッカー録画画面から切り替わって、ポルトの前夜祭で賑わうポルトのドウロ川沿いの
レストラン街カイス・ダ・リベイラに集まる群衆が映った。
花火を待つ人びとの映像であった。リポーターが絶叫していた。
慣例のサン・ジョアン祭の前夜祭報告であった。
ものすごい観衆である。映像を見ていて、行かなくて良かったと思う。
予約していなければ、レストランに入れるわけがなかったし、小さな相棒が撮影できる状態ではなかった。
先見を、相棒は見ていた。 興奮するリポーターの報告がやがてカウントダウンして、
花火が上がる映像に変わった深夜12時。
テレビ画面から宿の窓に目を写した。
暗闇の空に花火が弾けた。前夜祭の生の花火であった。
テレビの花火の映像と窓から見える生の花火を見比べ相棒が息を吐いた。
花火の規模は、相棒が毎年通う隣町、東海市の大池公園で打ち上げる花火と比べてはいけない。
優雅な規模の大きさ、美しさが歴然である。
でも、異国で見る花火に相棒は両手を叩き歓喜していた。 *「地球の歩き方」参照*
終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。
次回をお楽しみに・・・・・・・2012年3月掲載 |
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