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露天の本屋街(本の市 Feira de Livro)とアズレージョの壁画
5月下旬から6月上旬の約3週間にわたり、エドゥワルド7世公園で開かれる。
公園内に仮設店舗がずらりと並び、本が10%引き前後で取引される。
夜には、ミニコンサートも催され、初夏の公園は深夜までのお祭り騒ぎである。
☆リスボン6の説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
リベルダーデ通り周辺は、リスボンのシャンゼリゼと呼ばれている。
ポンバル侯爵広場周辺は、高級ホテル銀行などが集まるビジネス街になっている。
エドゥワルド7世公園の1番上にある展望台からは、正面にポンバル侯爵像がみえる。
右側には、バイロ・アルトの丘、左には、サン・ジョルジェ城が見える。
晴れていれば、青く輝くテージョ川と対岸までもが見渡せる。
「ポー君の旅日記」 ☆ エドゥアルド7世公園のリスボン6 ☆ 〔 文・杉澤理史 〕 ≪2008紀行文・6≫ 《めざめ》 腹が減って目覚めた。天井からの水滴落下もないのどかな朝であった。 モーニングタイムまで2時間もある。 6時だった。 目が覚めたら2度寝が出来ない歳になっていた。 夜明けの遅いポルトガルの、6月の早朝である。 窓のカーテンの向こうは、真っ暗。 夕焼けが夜の9時過ぎの、6月のポルトガルであった。 部屋を出て、5階フロアーにあるエレベーター前のソファに座った。灯があった。
持参した角川文庫『天使と悪魔(上)』(ダン・ブラウン著)の続きが読みたかった。
ページ197をめくって、ページ198の文章を読み始め、唸ってしまった。
〔ラングドンは1ドル札を手渡した。〕
ポーは、絶句した。
ポルト市在住の、才女YUKOさんとの2年前の会話が、そのまま、本の中に現れたのだった。 「けいの豆日記ノート」 《ポルトガル国旗》 8時のモーニングでは焼きたてのパンを3個もたべる。 オレンジジュース2杯と温かいコーヒーに牛乳をたっぷり加えて飲む。こちらでいう、ガラオン風味だ。 6月8日の日曜日。リスボンの空は今朝も真っ青だった。 今日は首都リスボンから北東にあるスペインとの国境の町〈ポルタレグレ〉まで、200キロメートル以上もあるバスの旅が待っている。 相棒が昨日下調べして、近くに動物園があるセッテ・リオス・バスターミナルから13時発だと分かっていた。 それまでの時間を〈エドゥアルド7世公園〉に行くことにした。 ポンバル侯爵公園まで昨日とはコースを変えて歩く。石畳を歩くのにも慣れてきた。 昨日の朝と、今朝の景観が違う。やたらとポルトガル国旗が眼に飛び込んでくる。 ホテルにも商店にもアパートの窓窓にも、国旗の大きさは違うが、〔誠実と希望の緑と、新世界発見のため大海原に乗り出したポルトガル人の血を表す赤。 その境に黄金の紋章。紋章は天測儀で、その真ん中にイスラムから奪い返した7つの城とポルトガルの王を表す5つの盾〕の国旗が飾られていた。 Aグループで、昨夜トルコに2−0で勝った喜びと感謝を、市民は国旗に祝っているようだ。 4年ごとに行われている〔フットボールヨーロッパ選手権大会〕は、ポルトガルの人 びとにとってはオリンピックより偉大なのかも知れない。それにしても、国旗の数が半端 ではなかった。国旗の林であった。 オリンピックで日本の選手が金メダルを取った時、首都リスボンのように首都東京の市民は家々に、〔日の丸〕の国旗を目の前の光景のように揚げたであろうか。 国旗とは国家の象徴だ。ポルトガルは国旗を誇りにしていた。 でも、日の丸は、何処の国の国旗なのだろうと、そして、〔日の丸の旗〕はスポーツ祭典用の〔日本の国旗〕だと、子供たちは考えるかも知れないとさえ思えた。 ポンバル侯爵公園の、あの小さな新聞スタンドには、人々が並んでいた。 写真展の時、会場にピンナップしようと列に並んだ。 だが、10人ほど前で品切れ。記念の新聞は買えなかった。 相棒がいう。『公園のどこかに落ちているよ。読めば、いらないもの』 今日の朝刊を捨てる市民がいるはずはない。昨夜の熱狂乱舞が眼に焼きついていた。 「けいの豆日記ノート」 《エドゥアルド7世公園》 6回のポルトガルの旅で、首都リスボンに宿泊したのは30回以上になろうか。 そのたびに〈バイト・アルト周辺〉や〈アルファマ周辺〉の起伏の激しい狭い石畳の路地をとめどなく歩き回リスボン市街を走る路面電車の追っかけと、全線の乗車走破を楽しんでいた。 なにせ、リスボンは路面電車が町に溶け込み、よく似合った。相棒がいう。 『路面電車に乗っていると、リスボンは遊園地みたいだね』 路面電車の写真だけで300シーンはある。路面電車だけで写真展ができるほどだ。 気がつけば、〔エドゥアルド7世公園〕に行ったことがなかった。 咲き誇るポンバル侯爵公園のジャカランダの薄紫の花を再度見ながら、中央に幾何学模様の芝生地帯が広がる右側の石畳の坂道を登る。 坂道はウオーキングを楽しむ市民が多い。ここは、早朝の清々しい空気を吸い込む楽園であった。 目の前を、軽々と駆け上がって行く婦人がいる。その、駆け上がって行った婦人が下って来た。後ろ向きで、だ。 ポーは振り向いて婦人の顔を見た。日本人のような顔だったが、素知らぬ表情だったので中国の人かも知れないと思う。 また、フットワークよく駆け上がって来た。 どう見ても日本人だ。 おはよう!と声をかけてみた。唇が歪んだかに見えた。 彼女は15メートルほど駆け上がり、10メートルほど背走で下る。 その繰り返しを何度も軽やかに舞ってみせ、遠ざかって行く。 その間、相棒のシャッター音を何度か聞いた。 石畳の坂道には、箱型の小屋が貨物列車のように坂上に向って連なり、朝日を受けて輝いていた。 それも色鮮やかな花列車だ。黄色、桃色、青色などのペンキで塗られた小屋だ。 『なにかな〜?倉庫?違うな〜?露店・・・かな?』 と、相棒は吐きながら小屋群を撮っている。小屋はすべて閉まっていた。 閉まった戸板には、キリストや路面電車や4月25日橋などの絵が描いてあった。 よく見ると描いた黒い線は一つ一つがポルトガル語アルファベット23文字で、絵はその集合体だと知った。 シャターを切るたびに、相棒のほほ笑みが増していくのを見た。 中央の広々とした芝生地帯を両側にある石畳の坂道が挟み込む。芝生地帯の幅は、目測で200メートルではきかない。 〈エドゥアルド7世公園〉は、まさに、広大な斜面に造られた芝生の公園であった。 後で分かったことだが、リスボンから300キロメートル離れた北の港町ポルト市に住む友人の才女YUKOさんに会ったときに聞いて、相棒は絶句した。 それは、知ると知らぬでは、旅人にとっては雲泥の差であった。 中央の芝生地帯はフランス式庭園であり、その庭園をはさみこむような両坂道にある貨物列車みたいな小屋はフェイラ・デ・リヴロ(本の市)に使うもので、 毎年5月中旬から6月中旬にかけ全国から本屋が集まって開催されている名物の〈本の市場〉であったのだ。 その市場は、暑い季節におこなわれるため涼しくなる夕方から夜中まで開かれ、安い本を求める夕涼み客で賑わうらしい。 この〈本の市場〉のことを知った時の相棒の悲しそうな顔が今も忘れられない。 悲しさは安い本が買えなかったからではない。人々が集まる貴重な被写体を一つ、みすみす逃したためだった。 知っていれば、シントラ散策でくたびれ果てていたが立ち寄れたのにという悔しさであった。 本市場のことはガイド本には小さく載っていた。 その情報をポーが見落としていたのだ。 情報採取の役目はポーが担当し、相棒が写真取材旅のスケジュールを組み立てる。 移動は列車にするのか、乗り合いバスにするかは相棒の〈地図頭脳〉に任せる。それが、最良だと確信していた。 中でも、ガイド本がなければ、限られた時間の中での撮影取材計画は立てられなかった。 6回のコツコツ旅で、80ヶ所もの市町村を、まして、一日二万歩を目標に歩くポルトガルの旅はできなかったであろう。 ともあれ、ガイド本のおかげで相棒とケチケチ旅を続けて来られた。 そしてポルトガルの各地を、旅人として6回も歩きまわってこられた。 その本屋の小屋が並ぶ、石畳の坂を登りきったところが広いテラスになっていた。 露店のおばさんがひとり退屈そうに、小さな台の上にポルトガルの小さな国旗やフットボール観戦をするとき肩にかける色鮮やかな帯を並べて売っていた。 その長くて広いテラスは、展望台でもあった。 300メートル以上も登って来た坂下正面には広大な芝生地帯があり、その先にポンバル侯爵公園に立つポンバル侯爵の像が広い青空の下に浮き上がり、 その下にリベルダーデ通りの緑のプラタナス林が伸び、さらにその先に碧いテージョ川が海のように広がって見える。 まさに、晴天の下の〈リスボン大パノラマ〉であった。 それにしても、ポルトガルの空の色はどうしてこんなに濃い青色なのだろうと、ポーはその時も思った。 空気の透明度だけではない。照りつけてくる陽射しの強さのせいでもないはずだと。 「けいの豆日記ノート」 《公園の中のアズレージョに出合う》 宿に戻る時間が近づく。相棒がスタスタと登って来た石畳の坂道を避けて、左側の樹木が生い茂る小道を下る。 陽射しを浴びた木々の葉が、そよ風に揺れて踊って輝く。 小道の先が開いた。ポッカリという広い青空だ。その空間に池と大きな華麗な外装の建物があった。 池の中には、馬を激走させる半裸体の美女が左手に手綱を握り、右手は天を突く勇姿の大理石像がある。 その像の周りをカモの親子や白鳥と黒鳥がのどかに泳ぐ。ここもエドゥアルド7世公園の一部なのかも知れない。 ガイド本の地図を見ると、目の前の建物は体育館らしい。しかし、どう見ても体育館には見えなかった。 窓の飾りも洒落ていたし、何よりも外壁に3×4メートル以上もある大きなアズレージョ(青で描かれたタイル画)が陽射しを浴びてはめ込まれていた。 その中の一つ、〈SAGRES〉と書かれたアズレージョは迫力があった。 ポルトガルの南西端、つまりユーラシア大陸の南西の果てにある町〈サグレス〉のアズレージョである。 2003年2月に行ったとき、 サグレス岬は荒涼とした大地が大西洋に突き出し、高波が岩礁に打ち寄せ強風で高い波飛沫をまき散らしていた。 アズレージョを見たとき、まずその体感光景が浮かんでいた。 その〈SAGRES〉のアズレージョは、まさに荒れ狂うサグレス岬の渦巻く海だった。 波模様の中に激走する馬の群れがある。沖に三つまたの槍を高く突き出した馬上のサタンがいる。 兵士のゆがんだ顔、悲壮な馬の顔が渦巻きの中で乱れて浮かぶ。 左上の岩礁には帽子をかぶった男が立ち、荒れ狂う海を見つめバイオリンを弾く。 その男に向って助けを求める裸身の女性。人魚の姿だ。 サタンの背後の沖には蜃気楼のように島が浮かび、行列の中に大きな象が見える。 そんな情景のアズレージョだった。 でも、ポーの知識では何を描いているのか判らない。 しかし、一枚一枚のタイルに焼きついた青の世界が1000枚ものタイルの集合体が、強烈な一枚の絵画となって心に飛び込んでくる。 ポーは、しばらく見入ってしまった。 サグレスは、かつて世界に飛び出すためのポルトガル大航海時代幕開けのための準備基地であった。 大冒険への夢の懸け橋となったサグレス岬には何があったのか。このアズレージョ画は何を語りかけているのか。 ポーの知らない宗教的な葛藤を描いているのだろうか。 われわれの旅には、大冒険は必要なかった。 『愛しのポルトガル』が写真取材のふたり旅のテーマであり、各地でいろいろな人たちに会えることを目的としていた。 素敵なホテルに泊まりおいしいポルトガル料理を食べ、憧れのポートワインを飲み、 素敵なお土産を買うツアーも憧れではあるが、最低3週間は撮影取材旅がしたい。 それも自由でたっぷりな撮影時間だ。そのためには、節約しかない。 被写体を足で探すケチケチ旅が必要だった。 移動はバスか列車、それに足であった。現地バスツアーもあったがやめて、市営バスを利用した。 バスで30分かけて登った山の中腹の町からは、帰りは2時間半もかけて足で下った。 片道のバス代節約にもなるが、歩くスピードと目線が撮影取材には大切でもあった。 それに、思わぬ出合いである。 息も詰まる景観であったり、歓喜の建造物であったり、その地の日常食生活を垣間見られる市民の台所的市場であったり、 相棒の瞳が濡れる喜怒哀楽の人々の素顔との出会いが待っていてくれた。 また、旅は貴重な体験をくれる。それは、瞬時に判断する能力と忍耐力であった。 特に判断力と決断力は、旅には大切な必需品だと教えられた。 「けいの豆日記ノート」 《スーパーマーケットでイチゴを買う》 宿へ向かった。ジャカランダの木から薄紫の花びらが風にのって舞ってきた、と書けば桜の花びらのようで可憐だが、実は筒状な花弁は重い。
ボトボトと落ちてきた。
ジャカランダの花見も最盛期を過ぎようとしていた午前中の3時間散策は、万歩計で7000歩弱であったが相棒の顔は満足気であった。
思うような写真が撮れたのかも知れない。 3泊分の宿泊費120ユーロ(20400円)をカードで払い、大型旅行バック2個を3日間戻ってくるまで預かってもらった。その担当は、数字に強い相棒がした。 相棒は軽めのリュックにカメラバック、ポーは中型登山リュックにコロ付き移動バック。 それが、いつもの♪合羽(カッパはポルトガル語)からげて〜♪〈撮影取材短期旅姿〉だった。 13時出発の〈ポルタレグレ〉行きバスまで、1時間を切っていた。 地下鉄に乗るまで20分、乗って15分、〈セッテ・リオス・バスターミナル〉でバス券を買って乗り込むまで15分。 宿から〈マルケス・デ・ポンバル〉の地下鉄駅までが勝負だ。 石畳にコロの音を響かせて、ポルトガル国旗の林の坂道を登って行った。 だから、ポーをとめないで! *「地球の歩き方」参照*
終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2010年1月掲載 |
≪ポルトガル写真集&紀行文・2008年版≫ バックナンバーは、こちらからどうぞ・・・
2008−1話 Lisboa 5 |
2008−2話 Cascais 2 |
2008−3話 Estoril 2 |
2008−4話 Sintra 2 |
2008−5話 Sintra 3 |
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