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ワインセラーのジョゼ・マリア・ダ・フォンセッカの画像は、こちらからどうぞ!
☆ヴィラ・ノゲイラ・デ・アゼイタオンの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
リスボンからテージョ川を渡った対岸のヴィラ・ノゲイラ・デ・アゼイタオン。
こじんまりとした町ながらアデガ(ワインセラー)があり、歴史と文化の香りが漂う。
1834年以来アゼイタオンで良質のワインを造り続けて来た。
いまや各地にアデガをもつポルトガル最大のワインメーカーのひとつ。
昔のフォンセッカ家の邸宅を博物館とし、メダルや賞状を展示している。
アデガの見学にはガイドが付き、ポルトガル・仏・英語で説明してくれる。
「ポー君の旅日記」 ☆ ポルトガル最大級のワインセラーのヴィラ・ノゲイラ・デ・アゼオタオン ☆ ≪2008紀行文・17≫ 《バス停には、名前がない》 バスの運転手に肩を叩かれ起こされた。 どんこバスの揺れと長閑(のどか)な景色の心地よさで眠ってしまったのだ。 降ろされたバス停で、ふたりは戸惑う。 日本では、必ずバス停名が書いてあるのに、ここには、名前がなかった。 探したが、どこにも書いてない。不安がよぎる。 本当にここが〈アゼイタオン〉なのだろうか。 相棒がバスに乗る時、運転手に切符を見せ、『アゼイタオンで降ろしてください』と確かに、言った。 『アヴィーズ ム クアンド シェガールモシュ ア アゼイタオン』と、 「旅の指差し会話帳・ポルトガル編」を指しながら・・・。 その発音が聞き取れなかったのか。 いや、切符には行き先が書いてある。 見間違うはずがない。そのバス停の名前を、相棒が探し当てた。 降りたバス停は〈ヴィラ・ノゲイラ・デ・アゼイタオン〉であった。 ま新しい[風雨陽]避けのアクリル板で囲まれたバス停で、その壁に貼ってあった小さな時刻表を相棒が見つけ、バス停の名前を知った。 相棒はメモ帳に、時刻表を写す。小まめな配慮が何時も後で役立つ。 運転手にアゼイタオンに着いたら教えて欲しいと頼んでおいたので、運よく目的のバス停で降りることができた。 頼んでおかなければ、次のバス停のアナウンスもないし、バス停には名前もない。 寝込んでしまって、起こされたわれらは、運が良かったのだ。 地方に行くほど、バス停には名前がない。何故なのか。 観光客のために、バス停に名前を書く必要がないからだろうか。 ここは、住民一人ひとりのバス停なのだから。住民が誰でも知っているバス停だから名前はいらないのかも知れない。 相棒が呟(つぶや)く。 『日本の乗り物は丁寧すぎるからね。日本では当たり前でも、外国では通じないよ』 確かに、日本では駅名も、前後の駅名も書いてあるし、次の駅名のアナウンスは勿論のこと、車内電光板にも流される。 相棒が言うように、日本は丁寧すぎるのかも知れない。でも、知らない地を旅する者には、正確な表示はありがたい筈だ。 その〈アゼイタオン〉は大西洋に張り出したアラビダ半島を南下した、サン・ルイーズ山脈の麓にあった。 〈カシーリャス〉から、どんこバスで1時間余りかかる。[どんこバス2.8ユーロ(464円)の旅]であった。 「けいの豆日記ノート」 《小さな町の結婚式》 〈ヴィラ・ノゲイラ・デ・アゼイタオン〉の町は、映画セットのよう簡素な村という感じの田舎町であった。 でも、ワクワク、心が弾む。バス停から目的のワインセラーに向かう。 ≪ジョゼ・マリア・ダ・フォンセッカ≫の標識の矢印に従った。 古びた白壁の外壁に、鉄で作ったオブジェがいくつも並べられている店があった。 椅子、ランタン、帽子掛け、飾り窓、風見鶏、暖炉かきまわし棒など。 相棒のシャッターが鳴る。 ポーはトゥリズモ(観光案内所)を探すが、見当たらない。まず、ここの地図が欲しかった。 その時、相棒が突然走りだした。獲物を見つけた猟犬のように。 その先には着飾ったひとの群れがあった。ポーも察知した。 またも出合った結婚式だ。ポルトガルで出会った5回目の結婚式である。 そこには、ポルトガルの人々の素晴らしい笑顔が弾けていた。 相棒の標的の一つが結婚式。一日二万歩の目標は人との出会いであり、素敵な表情に出逢うこと。 風景より人々と出会った時の、その表情が目的の旅であった。 ポルトガル取材撮影を6回も続けているのは、ポルトガルの人々の今の顔に出会い撮影することであった。 惚れ込んだポルトガルの人々を、皆に知ってもらいたい一筋で。 小さな教会の壁面が薄紫色に見えた。道に面した中庭に教会から出てくる新郎新婦を待ち構える人々が40人近くもいる。 男も女も子供も、歓声を上げた。白いウエディングドレスが陽射しの中で輝いて、舞って、飛びついていった。 受けとめたのは新婦の父親だろう。白髪の顔が弾け笑っている。ドラマ映像なら、スローモーションにしたい。 だが、この手法は古いかも。でも、そうしたいほどのいい情景であり、胸を締め付ける感動があった。 中庭に咲くジャカランダの薄紫色の花が、6月の花嫁に似合うとポーは思った。 「けいの豆日記ノート」 《昼間のBARバール/酒場》 壁面のアズレージョ(青の磁器タイル画)が艶やかな、アデーガ(ワインセラー)の前に立った。 閉まっていた。観光案内版があった。観光客用案内版だが、ポルトガル語と英語だ。拾い読みした。 ワインショップの方は、10時から13時と14時30分から18時30分。 工場見学は、10時から12時15分と14時半から17時半である。 カーマで買ってきた、500円の腕時計を見た。1時半前。入場まで1時間はあった。 陽射しは容赦なく降り注ぐ。暑い。田舎道のメインストリートは燃えている。 小さなスーパーマーケットでは、店頭に並ぶイチゴやスイカ、イチジクは黄色いパラソルで覆われていたが、これも燃えていた。 日本では考えられない店頭展示だ。 飛び込むカフェも見当たらない。 目の前に、[AZEITOM BAR(アゼイタオン・バール)]と書かれた店に相棒が飛び込む。 カフェではなく、バール(酒場)だった。 店内は薄暗い。中年の男たちがテーブルを囲み、大型テレビにはサッカー映像が流れていた。 意外と広い店であった。田舎町の酒場というより、男たちの洒落た憩いのたまり場的な温かさがあった。 相棒は、臆せず奥のカウンターでグラスを磨くオレンジシャツを着た小太りの男に向かった。 男は笑顔で、ウンウンとうなずき、相棒に笑顔を送っている。 相棒はにこやかに大きなテーブルの一角に座り、『クーラーがきいて気持ちいいね〜え』と、吐く。 そこに、オレンジシャツが、グラスビール2杯を運んできた。ポーは、『飲めるの?』と、相棒に聞く。 『飲めるわけないよ!ここは、酒場だよ。持ってきた水を飲むから、ポー2杯のみな!』 ポーは、感涙した。 1杯、1ユーロ(160円)。暑い炎天下での1時間はキツイ。その機転に心が揺れる。これが、相棒なのだ。 昼間から酒場で時間をつぶす男たちを観察した。強面(こわおもて)の男たちではなさそうだ。 どの町でも見かけるカフェでたむろするおじさんたちの顔だった。 トランプのマークが、飛ぶ。慣れた手付きのカードさばきである。 日本では見られない昼日中(ひるひなか)の光景である。 でも、最近の日本でも、昼間の雀荘(じゃんそう)での客は高齢者が多いらしい。 両手を使うし頭脳も使うのが認知症対策として役立つらしい。 大型薄型テレビは、ポルトガルが2試合勝ち進んでいる4年に一度の「ヨーロッパサッカー選手権大会」の映像だ。 ポルトガルは、Aグループで今までトルコに2−0、チェコに3−1で勝ち、あと1勝すれば準々決勝に駒が進む。 サッカー中毒のヨーロッパ。ポルトガルも燃えていた。4年前の2004年は開催国であった。その時は準優勝だ。 だから、今年こそはと国民は期待に燃えていた。 相棒は、その雰囲気の中で、持参の水を飲みながら黙々と、千代紙で折鶴を折っている。 ポーは、酒場の店内の壁に飾ってある2枚の全紙大モノクロ写真を発見した。 ポルトガルの片田舎の酒場で、好きな二人に会えるとは想像もしていなかった。 その二人は、ジョン・レノンと唇を半開きにしたマリリン・モンローであった。 ポーはマリリンの写真の前で、見入ってしまった。この写真の顔が、ポーは昔から好きであった。 (ポーのPCの壁紙はその時撮って来た、マリリン・モンローのモノクロ写真) ピアノが鳴りだした。音の発信主は、小太りのオレンジシャツのおじさんであった。 片隅に置かれた年代物のピアノを抱くようにして奏で、ポーに向かって片手をちょっと振り、ニカッと笑む。 懐かしい旋律は「帰らざる河」だ。映画≪帰らざる河≫の中で歌うモンローの姿が急速に浮かぶ。 オレンジシャツおじさんの洒落た計らいであった。ピアノの音が身体に沁み込んでいくのが、心地よかった。 きっと、生涯忘れられないだろうな、とポーは思った。 「けいの豆日記ノート」 《お目当ての、ジョゼ・マリア・ダ・フォンセッカ[JMF]》 1834年からアゼイタオンで良質のワインを造り続けてきた[JMF]は、ポルトガルのアデーガ(ワインセラー)で、1〜2を争う名門中の名門である。 午後2時半に扉があき、入った。 薄暗い受付に広い空間。照明が凝っている。ワイン棚には高価そうなワイン瓶が寝そべっている。 本来なら予約しか、酒蔵案内の入場受け付けはしていないらしい。 運よく客はふたりだけであった。案内役の女性が言う。案内する言葉は、ポルトガル語・英語・フランス語だと。 だが、堪能なのは日本語、説明されても、ふたりには解せない。 その旨を、伝える。案内役の背の高い知的な女性は、微笑んだ。(おバカさんふたりを案内するのか〜) 入場料一人3.2ユーロ(486円)を払う。名前は、クリスティーナさん。 待合室から中庭に出た。広い庭園には古木のジャカランダが薄紫の花を咲かせ、その先に西部劇映画で見たような風車が回る。 相棒のカメラが鳴りだした。真っ青な竹藪の小道を通る。その時、ポーは閃(ひらめ)く。 会話もない、この息苦しい雰囲気を変えたかった。 持参のメモ帳に ≪竹≫ という字を書き、彼女に見せた。 当然、「?」と頭を傾げる。 この字は、と1本の青竹を握りしめ、「これが日本語の ≪竹≫ バムブ(bambu)、たけ」と、ポーは吐く。 更に≪竹≫と書いた文字の下に ≪BAMBU≫ と ≪TAKE≫ と書き加え、再度、吐いた。 彼女の顔に初めて、笑みが走る。 「sim、sim!」(はい、はい!)」と、「take、take、take!」と、声を出し、嬉しそう。 通じた!その後、一番奥にある薄暗いモシュカテルワインの酒蔵で、中には100年以上も貯蔵されている樽群も見せてくれた。 その時、ポーは彼女に ≪樽≫ ≪BARRIL≫ ≪taru≫ と、メモ帳に書いて渡した。 歓喜が走った。「taru! taru!」と、彼女は満面の笑みで吐いた。心が通じたとポーは思った。 背の高い彼女が上から、ハグしてくれた。相棒が言う。『よかったね〜え!ポー』と。 目の前にワイングラスが運ばれ、クリスティーナさんが試飲ワインを注いでくれた。 注いでくれた瓶のラベルを見た。[2005 PERIQUITA]と読めた。 ポルトガルで最も古いワインで、ここで1850年から製造されてきたという[ペリキータ]であった。 その赤ワインは2年物であったが、どうも彼女の計らいで、試飲させてくれたようだ。 口の中でふわっと広がり、のど越しが爽やかだった。うまい。 もう一品[2002 モシュカテレ・デ・セトゥーバル]のワインがグラスに注がれた。美しい琥珀色だ。 2010年にはこのワインを造ってから160周年になると、クリスティーナさんはいった。 相棒は、琥珀色の美しさにうっとり。写真を撮って、口に含む。 『これなら飲める。美味しい!』アルコールに弱い相棒が飲みほした。甘さが心地よい。マスカットの味がした。 ポーは、メモ紙に ≪美味しい!≫ ≪Ebm!≫ ≪Oisii!≫ と書いて、彼女に差し出した。 顔が弾けた。きれいな微笑みであった。「Oisii!」「Oisii!」と声を出し、これでいい?と視線を送って来た。 ポーは、大きく頷いて「エ ボン! オイシイ!」といい、笑顔を返した。 相棒は彼女に、『オブリガーダ!ありがとう!』と頭を下げた。彼女も「ありがとう!」と声をかけてきた。 失礼ながら何も買わずに外に出た。太陽光線が容赦なく降り注いでいた。 トゥリズモ(観光案内所)のマークを陽射しの中で見つける。小さな入り口が招き入れてくれた。 さっき、BARから歩いて来た時は気付かなかった。階段を上がったところにこじんまり。 でも中では、2人の美人係りが迎えてくれた。 席に相棒が座ると、「ジャポネーザ?」と。『スィン』と相棒。 ハイ、ぐらいは反発的に答えられる(失礼、な!)。 地図と資料はタダでくれる。ありがたい。地図をもらえば、こっちのもの。なにせ、相棒は地図に強かった。 係りの女性は、凝視できないほどの立派な胸の持ち主。ポーはしっかり見た。相棒は地図を凝視した。 「けいの豆日記ノート」 《炎天下を歩く》 頭の中に地図があった。勿論、相棒に従って、タイル工房がある隣町のバス停〈ヴィラ・フレスカ・デ・アゼイタオン〉に向かっていた。 道の照り返しが目を射る。左手に広大な葡萄農園が眩しく広がっている。 一本道は、灼熱であった。ポーが背負っているリックのサイドポケットから水ペットボトルを相棒が抜く。 飲む音が聞こえる。もう、ぬるま湯だろうな、とポーは思う。 民家もない、日陰もない自動車道を撮影しながら、30分も歩き続けていた。 小型軽自動車トラックがゆっくり走ってきた。 白髪おじさん運転手が何か叫ぶ。「ぺルト!・・・、」と、いう声だけが聞こえた。 「ぺルト(近い・・・)、そうか、もうすぐ隣町だ。近い、から頑張れと励ましてくれたに違いない。」と、ポーは勝手に決めた。 会話はだめだが、単語だけは、少しは覚えてきていた。 この炎天下を登山靴で歩くふたりだった。こんな、ポーを、とめないで。 *「地球の歩き方」参照*
終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2010年12月掲載 |
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