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☆カシーリャスの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
リスボンのテージョ川の対岸に位置するカシーリャス。
セトゥーバル、パルメラ、セジンブラに行く際の起点となっている。
リスボンのカイス・ダ・ソドレ駅からフェリーで10分である。
フェリーの発着も多く、リスボンで働く人たちの住宅街になっている。
郊外には、近代的なマンションが建ち並んでいる。
2010年には、ライトレールができ、便利になっている。
「ポー君の旅日記」 ☆ リスボンのベットタウンのカシーリャス ☆ 〔 文・杉澤理史 〕 ≪2008紀行文・16≫ 《アゼイタオンに行く前に》 ポルトガルに着いてから9日間快晴。今朝10日目の6月14日(土)も、
ポーが呼んでいる「ポルトガルブルー」の清々しい空の色だった。
ポンバル伯爵公園の地下鉄駅マルケス・デ・ポンバルから3つ目の駅バイシャ・シアード駅で乗り換えて、
1つ目のカイス・ド・ソドレ駅で、今日も降りた。
ここからフェリーに乗って対岸の〈カシーリャス〉からセトゥーバル行きのバスに乗って、
アゼイタオンまで足を延ばすことにしていた。
〈アゼイタオン〉には有名なワインセラーとアズレージョ(タイル画)工房があるからだった。 「けいの豆日記ノート」 《市場が好き》 カイス・ド・ソドレ駅からは、テージョ川沿いを列車が走っている。
その列車に乗れば15世紀に始まる大航海時代の栄華を十二分に堪能させてくれる〈ジェロニモス修道院〉や
1960年にエンリケ航海王子の生誕500回を記念して建てられた〈発見のモニュメント〉、
それに、16世紀はじめ船の出入りを監視するマヌエル様式の優雅な要塞として建てられた〈ベレンの塔〉など、
ポルトガルの大航海時代の歴史を満喫させてくれる〈ベレン地区〉に20分ほどで連れて行ってくれる。 そして、対岸に渡る船着き場がある。 その途中に市場があった。さほど大きな市場ではなかったが活気があった。当然、寄った。 昨日とは違った道を通ったため出合えた市場であった。 ガイド本に載っていればとっくに来ていた。なにせ相棒は、市場好きであったから。 市場の人々は、元気であった。高齢者が多い。当然、おばさんやおばあさんたちが多い。 相棒がカメラを向けると「ジャポネーザ!」と聞かれる。 『エウ ソウ ジャポネーザ!』と、相棒は笑みを忘れない。 それが、いい写真、暖かい人物写真を撮れることを会得していた。 そのたびに千代紙で折った手織りの感謝の折鶴が飛んで行った。 魚屋では、真鯛や鰯、タコが売れていく。 白い服装で身を包んだ肉屋のおばさん2人が「撮って!」と、店先に飛び出してきた。 相棒は、撮る。太り気味のおばさん達が弾けて笑って、カメラに収まる。 シャッターを押す相棒の嬉しさが、伝わってくる。 隣の売り場には、日本でもアジサイの葉っぱの裏側でうごめいているカタツムリが、網袋の中でにょきにょきしていた。 ♪角出せ、やりだせ、頭出せ♪。 ひと網袋に500匹ほどが、にょきにょきと歌の世界を演じている。 あまりの元気良さに、思わず身を引いてポーは眺めた。どうしても、食べる気がしない。 食文化とは、こんなものなのだ。それが、飛ぶように売れていく。 見ている間に20網袋が売り切れた。 買った人について行って、どんなふうに食べるのか、見たいという気持ちも起こるから不思議だ。 まさか、焼くなんてことはしないであろう。煮るか、蒸すか。 蒸すなんてことは、こちらではやるだろうか。ポーもなかなか好奇心旺盛であった。 北の港町〈ポルト〉に住むYUKOさんに会ったら聴いてみよう。 「けいの豆日記ノート」 《あの、おばさんからサクランボ》 昨日、あの桃とイチゴを売っていた腕っ節の太いおばさんが、相棒の顔を覚えていて声をかけてきた。 「セレ−ジャ!」と叫んでいた。サクランボ!だ。見ればわかる。赤黒いアメリカンチェリーであった。 イチゴをすくったちりとりの、半分の大きさのちりとりであったが、500グラム1ユーロと書かれた紙が川風で揺れていた。 でも、その大盛り状態に相棒、あまりの安さにふらつく。買った。確かに160円で、日本では買えない量だった。 その時、相棒が、叫んだ。『あ〜〜あ、セトゥーバル行きのバスが走って行っちゃった』と。 サクランボに目がくらみ、乗る予定のバスを見逃したのだった。 1時間以上はバスがないのかも知れない。だが、実際は2時間も待たなければならなかった。 慌てることはない。この時期、こちらの夕焼けは、夜9時なのだから。 トイレの手洗い水で、今日も日本のスーパーマーケットで千切り千切ってきたあの薄手のビニール袋(タイミーロール)に分け入れたサクランボを、相棒は洗ってきた。 水道水は飲んで飲めないことはない。でも、住民だって、水を買って飲んでいるのだから。 しかし、サクランボやイチゴを洗って食べるには、支障はないはずだ。 そのサクランボを頬張りながらの2時間半を、〈カシーリャス〉の町の散策に当てた。 「けいの豆日記ノート」 《カシーリャスの町を歩く》 腕時計の針は、11時前。太陽の位置は、名古屋ならこの時間帯ならとっくに昼を過ぎている。 でも、陽射しは暑い。しかし、テージョ川風は爽やかであった。ポルトガルの夏は、過ごしやすいのがいい。 木陰に入れば、涼しい。小さな秋をくれた。 船着場から坂道を上って行く先に、〈カシーリャス〉の古びた町並みが広がっていた。 メインストリートはなだらかな坂道。 この町でも昨日、聖アントニオ祭が行われていたに違いない雰囲気がそのまま残っていた。 色とりどりのモールが通りに張りめぐらされたままだった。 対岸の首都リスボンの祭りは、国家の祭りだ。商店街は客寄せに黙っている手はない。 ここでも町をあげて、ポルトガルの守護聖人サント・アントニオを祝っていたに相違ないとポーは思う。 投げ釣りなどの釣り道具を売っている釣り具店が目立つ。そのひとつの釣具店にポーは入ってみた。 日本の釣具店は一時の釣りブームが去り、猫も杓子も釣竿を求め海岸の堤防に鈴なりだった釣り人も少なくなり、 釣り船店の釣り船利用者も減っている。 当然、テレビの釣り番組も根強く残っているけれど、ピークは過ぎた。 でも、ここでは釣りが休みの日の娯楽として細く長く残っているようだ。 竿の値段を見た。高い。日本の3倍ほどの値が付いている。 日常生活必需品、たとえば市場やスーパーマーケットでは野菜や果物、魚介類、肉類、ワインなど、 それに日々使用する交通手段の列車や各駅停車のバス運賃は、驚くほど安い。 だが、テレビなど娯楽品は意外と高値であった。それに、飲み水。 日本では店に入れば、氷の入った水がただで当然のように出てきて、夏は冷たいおしぼり、 冬は熱いおしぼりが出てくるが、こちらでは皆無。 水を頼むのとグラスビールを頼むのと、とんとんの値段なのだ。 ビールにしますか? 水にしますか? あなたならどちらを選びます? 「けいの豆日記ノート」 《高層アパート群を見た》 坂道を上って行くと左手テージョ川沿いに14階建てのアパート群の建物が幾層も見えてきた。 相棒のシャッターが鳴りだした。いままで数少なかったシャッターの音が突然鳴りだしたのだ。 相棒の心の響き、興味の波が伝わってくる。カメラの音でそれが、感受できた。 高層のアパートは薄汚れた外壁であったが、かつては真白な住民が憧れのモダンな住居群であったと想像できた。 それぞれの窓からは青い青いテージョ川を眺め、川風に幸せを感じていただろうと思う。 しかし、何十年も外壁塗装工事もおこなわれず、満潮時には塩水が混ざる川風で窓枠が黒ずみ、壁面も傷み始めているように見えた。 このアパート群は対岸の首都リスボンに勤める生活者が多いはずだ。 帰宅時、高層の建物を見て、入居当時の夢のようなマイホームの姿に、 時の流れに心を暗くしているサラリーマン族も多いに違いないと思う。 「けいの豆日記ノート」 《カフェでの会話》 昼前だった。 セトゥーバル行きバスに乗って、アゼイタオンに行くまでまだ時間はある。 メインストリートに戻ると、カフェ前で町の人々、と言っても女性はいない。 おじさんたちばかりがカフェテラスでガラオンコーヒーや赤ワインを飲み、サッカー話で盛り上がっているのを目撃した。 相棒が、そのカフェで注文を取りに来た20歳前後の女性にグラスビール(1.00ユーロ)と7ナップ(0.80ユーロ)計1.80ユーロ(334円)を頼む。 腕時計は11時。ここで、昼食にした。 相棒が『昼飯だぜ!』と、バックから取りだしたのは、相棒の住まいの隣町にある安売り店〈ゲンキー〉で買ってきた駄菓子であった。
商品名「やわらか餅(醤油味)つきたての食感」と「夢菓子屋さん(大豆昆布)」。
日本人ならご想像できるはず。
くどくど解説するのも、なんなので止めておきます。
隣のテーブルでトランプをしていたおじさん達が、なんだ?この臭いは?と振り向くほど、
醤油の香りを撒き散らしもぐもぐと餅焼きを食べた。 その時、隣のおじさん達に味わってもらいたい、と、悪戯心(いたずらごころ)がポーに走った。 思ったら、試したくなるのが、ポー魂(だましい)だ。 察知した相棒は『やめたら・・・』と、視線を送ってくる。その眼差しに臆(おく)さないのが、ポーである。 口髭が似合うおじさんが、オレに、喰えってか?ジャポネーズ!と吐き、「やわらか醤油味の餅」一塊をパクッと口に入れた。 醤油味の香りが濃さを増す。餅のつきたて食感を、ひと噛みした。 この感触は独特のものだ。ぎゃ〜あ!と、絶叫もしくは絶句することを期待していたポーだった。 だが、しばしの沈黙があった後、口髭おじさんは、にやりと笑む。
その顔に、ゾッとする。筋肉隆々の右腕のパンチが飛んできたら、武蔵のごとく小次郎の剣先をひらりかわそうと身構えた。
ははは、と、口髭おじさんは声を出し睨んだ。殴られるか、身をかわすか。
口髭おじさんは自分が飲んでいたワイングラスに赤ワインをなみなみとつぎ足し、グイッとグラスを空けた。 「けいの豆日記ノート」 《帆船に乗った》 バスに乗るまで、まだ時間があった。
バスターミナルに戻る途中の視野に、テージョ川に浮かぶ大きな帆船(はんせん)の雄姿が飛び込んできた。
見捨てるには欲しい立派な船姿であった。ガイド本にも紹介されていない。だが、相棒の好奇心でタラップを登った。
甲板に降りたところに立っていた、海軍服に身を包んだ長身の大男に相棒は2人分6ユーロを払った。 矢印の見物順に従って見て回った。
狭い階段を降りると洒落た食堂があり、白い服を着た高官の人形がワインを飲みながらの食事中だ。
さらに階段を降りると、漕ぎ手がオールを握り上半身裸で、苦しそうな表情で漕ぐ人形が船体に張り付くように並んでいる。
漕ぎ手はいつも風が吹き続けることを祈って出航して行ったに違いない。 「けいの豆日記ノート」 《アゼイタオンに向かう》 12時15分。太陽が照りつけるカシーリャス野外バスターミナルからセトゥーバル行きのバスに乗る。
10人ほどの乗客。大きな買い物袋が目立つ。体格のいいおばさん達がおしゃべりをしている。
情報交換のようだ。観光客はいない。
相棒はバスに乗り込み切符を見せながら運転手に頼む。
アゼイタオンに着いたら、教えて欲しいと。
「シン! ジャポネーザ!」と、微笑が心地よく返ってくる。 どんこバスは広大なアラビダ半島を南下。サン・ルイーズ山脈に向かう。その麓にアゼイタオンがある。
小さな町や村をいくつも過ぎる。どんこバスは時間がかかるが、いろいろな街の景観が見られるから楽しい。
白い壁、古びたオレンジ色の屋根瓦。庭先に実るオレンジ。
色とりどりの洗濯物が風に揺れる。木陰のベンチに座り手を振るお年寄り。
長閑(のどか)。 *「地球の歩き方」参照*
終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2010年11月掲載 |
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