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エヴォラ大学回廊・エヴォラ大学のアズレージョ・エヴォラ大学の礼拝堂の画像は、こちらからどうぞ!
☆エヴォラの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
エヴォラは城壁で囲まれた空間すべてが、ひっくるめて世界遺産になった。
それは、先史時代、ケルト、ローマ、中世、近世の各時代の文化遺産が、
町を取り巻く城壁内に凝縮されているからである。
6月、クジャクが放し飼いにされた公園はジャカランダの花が満開であった。
フットボール(サッカー)の人気熱は町じゅうを興奮させていた。
「ポー君の旅日記」 ☆ エヴォラ大学のエヴォラ3 ☆ 〔 文・杉澤理史 〕 ≪2008紀行文・26≫ 《1584年8月の事実》 日本に帰国するまであと一週間になってしまった6月20日(金)も、早朝から快晴であった。 この日は4年ぶりで一日中〈アライオロス〉に行くことにしていたが、モーニング時に相棒の放った一言で予定を変えた。 エヴォラはローマ時代からこの地方の中心として栄え、ルネッサンス期には大学も設置された学芸の都なのだ。 歴史的事実としても、1584年8月に日本からはるばる海を渡った天正遺欧少年使節団がリスボンからこの町を訪れている。 使節団は8日間エヴォラに滞在していたのだ。 これが 『午前中は、エヴォラ大学に行ってみよう!』 と吐いた、相棒の発想源である。 朝食モーニングタイムを充分満喫した相棒の行動は素早かった。 宿のカウンターに走り受付の胸の大きな大柄の女性にバス発着時刻表を見せてもらい、アライオロス行き12時45分発に決めた。 それまで、4時間余りあった。 早々、定宿[ディアナ]を飛び出しエヴォラ大学に向かう。 「けいの豆日記ノート」 《カテドラル》 今朝も定宿前の[10月5日通り]は、暑い陽射しで包まれていた。直射日光は強いが、汗がぼたぼた流れ落ちることはない。 湿度が低いので空気がさらさらしていて、木陰に入れば涼しいのだ。 だから、一日二万歩の撮影取材旅も苦にならなかった。 石畳の坂道を上って行くとすぐ目の前に大きなカテドラル(大聖堂)が迫り、 その隣がエヴォラ美術館、ロイオス教会、ディアナ神殿などがあり世界遺産地区となっている。 城壁の囲まれた古都エヴォラ自体が世界遺産であった。 12〜13世紀のロマネスクからゴシック過渡期に建てられたというカテドラル。 正面のファサードは頑固な要塞のようにそびえ建って見える。中に入ると冷やりと涼しい。 八角形のドーム状の天井は高く、神々(こうごう)しく、美しい。 天井近くにキリスト像があり、その左右にある天窓から陽射しがこぼれ落ちてくる。 その明るさの中にパイプオルガンが浮かび上がる。このパイプオルガンで少年使節団の少年が奏でたという。 どんな曲を弾いたのかは定かでない。 「けいの豆日記ノート」 《エヴォラ大学》 カテドラルを回り込み石畳の急坂道を下ると、2階建の白い建物があった。 羽ばたく鳩にエヴォラ大学の文字で丸く囲んだマークが門柱に浮かんでいる。 エヴォラ大学の建物は、16世紀に建てられたイタリア・ルネッスサンス様式だと言う。 歴史的には、イエズス会によって1559年創設された≪エスピリト・サント・エヴォラ大学≫で、 ジョアン三世の弟エンリケ(航海王子)が開き二百年間にわたる神学校であったという。 しかし、1759年イエズス会が追放され大学も閉鎖するが、現在はエヴォラ大学の校舎の一部として使われている。 その当時の様式を堪能できるに違いないと思い、中に入ってみたくなるのは何時ものことであった。 大学構内に入る前に、門扉のところで構内から出て来た中年の眼鏡をかけた紳士に相棒が声をかけた。 『日本から来たカメラマンですが、構内に入って撮影してもいいですか』 と。 紳士は、深く頷いた。そして「いいとも〜ゥ!」と吐いた。相棒は面食らい、ポーは声を出して笑ってしまった。 この教授風の男は、もしかしたらタモリさんの長寿番組も知るほどの日本通なのかもしれない。 とっさにバックから折鶴を取り出して差し出し 『オブリガーダ!』 と相棒は礼を示した。 紳士の眼鏡越しの眼が笑って、 「ありがとう!案内してあげたいが、先を急ぐので、楽しんで撮ってください、」 と手を振った。 ホールの高い壁や半円天井は真っ白で、ここから延びていく通路の壁も半円天井も白く、 大学の雰囲気と言うよりホテルのように落ち着いた柔らかな雰囲気があった。 白い壁は、高さ1メートルほどのアズレージョタイル画で飾られている。 アズレージョ好きのポーは18世紀アズレージョに見入る。 大切に保存されたアズレージョは繊細で青みも美しく深い。 アリストテレスがアレキサンダーを教えている図は目を引く。 ここはアズレージョタイル画の博物館のようだ。何点あるか数えてみたくなるポーだった。 通路を抜けると中庭に出る。 2階建の回廊はルネッサンス様式で中庭を囲むように建造され、青空から注ぐ陽射しで輝き美しく見える。 回廊の白壁にもアズレージョが飾られ、回廊に面して教室がいくつもあり、 その教室が何を学ぶところなのかはアズレージョを見れば判る。 たとえば、歴史学なのか心理学なのか。洒落ていて嬉しくなる回廊であった。 その中庭の中央に噴水があり、噴水を囲んでベニヤ板が中庭全体をおおうように敷き詰めてられ、 そこに何百ものスチ―ルパイプの椅子が並べられている。 まさに、その撤去作業が数人の職人で始められようとしていた。ここで何が行われていたかは、この後すぐわかった。 「けいの豆日記ノート」 《喜びに弾けた笑顔》 回廊にはいくつも長椅子が置いてある。ジーパンに半袖姿の学生たちが中庭を見つめながら語り合っている。 しかし、人影が少ないことに気づいた相棒が、ポツリ吐く。 『あのさ〜あ、さっき通路を歩いていて気になった部屋を思い出したよ。行くよ〜ゥ』いつも、急である。 その部屋は、通路の奥にあった。 細長い空間に1.8×2.0メートルのパネルが折り重なるように20枚ほど並べられ、 1枚のパネルに整然と200枚ほどの紙焼き写真が貼られていた。 正装(黒い背広に黒いネクタイ)姿の男女が満面笑顔で弾けた顔写真や噴水前に 特別この日のために置かれた円形ビニール水浴に飛び込み、 びっしょびっしょになった姿など学生たちが嬉しさで弾け飛んだ若々しさあふれたスナップ写真であった。 これが、エヴォラ大学の慣例行事のファイナルなのだろう。 つまりこの写真は、数日前に回廊で囲まれた中庭で卒業式が行われた証であった。 『惜しかったな〜ぁ、悔しいな〜ぁ!』 相棒の溜息である。 みすみす絶好のシャッターチャンスを見逃したカメラマンの苦渋であった。 「けいの豆日記ノート」 《礼拝堂》 『まっ、いいか!』 気持ちの切り替えも早かった。 旅は、この切り替えが必要であり大切なのだ。気を引きずっては先に進めない。 大学の建物に併設して礼拝堂があった。 プレートには牧師の大学とあり、その下に神聖なキリストの教会と読めた。内部は簡素だが、 200人は長椅子に座り祈るスペースはある。 正面のアーチ状の祭壇にキリスト像が浮かび、その背景は金粉で施された細かい彫り物絵柄になっている。 18世紀に建てられたバロック様式の礼拝堂は、大学の卒業式に使われていたと聞く。 バスの出発まで40分余りになっていた。バスターミナルに行くには、定宿の前を通るのでトイレに寄る。
ブーゲンビリヤの花の下で、宿のオーナーばあさまと愛犬リンダがレストラン前の椅子で迎えてくれた。 ジラルド広場では、大型テレビ映像のスクリーン片付け作業が始まっていた。 楽しみが消え去った昨夜のフットボール試合。ドイツに2−3で負けた。 優勝の夢は奪い取られてしまった。 ポルトガルの人々の夢も希望も楽しみも、はかなく消えたのだった。 その作業の様子を見つめていたハンチングのおじさんは悲しげに呟いた。 俺は、これから、何を楽しみに、生きていけばいいのか・・・・と。 *「地球の歩き方」参照*
終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2011年9月掲載 |
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