ホーム ★ ポルトガル豆知識 ★ プロフィール ★ ポルトガル写真集 ★ 写真展案内 ★ ポー君の豆日記 ★ 今月の1枚 ★ リンク ★
(溶岩の海のポルト・モニス)
Portugal Photo Gallery --- Porto Moniz
小さな画面をクリックすると、大きな画面&コメントのページになります!
フンシャルの夜景
≪マデイラ島の地図≫ |
☆ポルト・モニスの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
ポルト・モニスまでの道は「黄金の道」と呼ばれ、スリル満点の連続である。
大西洋の荒波と岩壁がいかにも最果ての町といった感じである。
溶岩が創造した天然の巨大なプールが売り物になっている。
町の後ろには見上げんばかりの棚状の畑が積み重なっている。
「ポー君の旅日記」 ☆ 溶岩の海のポルト・モニス ☆ 〔 文・杉澤理史 〕 ≪2006紀行文・19≫ 《島の北西端ポルト・モニスに行く》 島に来て初めての霧雨が降る宿を出て、昨日乗ったバスターミナルに向
かう。石畳の坂道を登っていくと左手下に校舎が見えた。昨日はなかった
子供達の声が聞こえてきたからだ。校庭で子供たちが始業前の時間を霧雨
の中でボールを追いかけ跳び回る声だった。驚いたのは、その広い校庭全
面が芝生でおおわれたサッカー場になっていたからだ。まさに、フットボ
ール好きのポルトガルの校庭であった。その校庭が霧雨の中で緑色に輝いていた。 島の北西端にあるポルト・モニスまでは70km余り。乗車時間は3時
間だという。運賃は片道一人4.4ユーロ(705円)だ。バスツアーだと
42ユーロ(6720円)かかる。勿論、昼食代込みで、案内つきだ。でも、
案内説明があっても内容が解せないし、それにも増して料金が高すぎた。
我々のバスツアーは、市営バス各駅停車を使ってのバス代往復1410
円。それに、昼食代一人分で500円でおさえる。それに、なによりも、
自由な撮影時間がたっぷりあった。 「けいの豆日記ノート」 6人を乗せた市営バスはバスターミナルを出ると坂道を下って海岸通り
に向かう。島にも、月曜日のラッシュアワーがあった。道が狭いことと、
信号が少ないこともあって、狭い道は大渋滞だ。そのフンシャルの繁華街
を抜けなくてはポルト・モニスには行けない。 トンネルの先にある海岸の町には、白、黄色、青、桃色のアジサイが咲
いていた。日本なら5月6月頃なのに11月のいま、島はアジサイが真盛
りだった。そのベイラ・ブラーヴァの町にあるバス停から、乗客12人を
乗せた市営バスは海岸から狭い坂道を北にそびえる山に向かってノロノロ
と登っていった。小雨はやんでいたが、空には黒雲がベターと貼りついて
いる。 「けいの豆日記ノート」 このマデイラ島は標高1800m級から1000m級の山々がある火山
群島に属し、マデイラ島もかつて噴火した島なのだ。そして、メキシコ湾
流の影響を受ける亜熱帯式気候の地であった。木々が茂る、この狭い山道
は海抜1000m以上はあるかもしれない。ハンドルを切りそこねれば、
奈落の底に転げ落ちていくしかない。そんなエンクメア−ダ峠のバス停で
登山姿の男女ペア−が降りた。マデイラ島は海を楽しむだけでなく、山岳
を尾根づたいに散策する楽しみもあるようだ。
運転席からおじさんが振り向いて相棒に語りかけた。 8人を乗せた市営バスは息を整えて、20分ほど山中を走ると視界が急
に開け、ロザリオのバス停に着く。
ここからは島の北側の大西洋が雨雲の下で広がった。
運転手のおじさんが「どうだい、綺麗な町だろ。私は大好きだ」と相棒
に語りかけた。後は、下るだけだよ、とおじさんはひとこと言ってサイド
ブレーキをはずした。 おじさんが言ったように、美しい景観であった。絵にしたいくらいの情 感があるが、ポーは絵下手なので悔しい思いをした。おじさんはシャター を切る相棒を思ってか、振動を和らげる運転してくれる配慮があった。 そのこころ根がありがたかった。その優しさにポーは感謝していた。 山から海に流れ込む幅10mほどの川筋にあるバス停で、おじさんはサ イドブレーキを手前に引いて「15分休憩!」と乗客に声をかけた。 時計は11時37分を指している。フンシャルから2時間37分かけて
島の反対側にたどり着いた。15分の休憩ではサン・ヴィセンテの町を散
策する時間はない。相棒はカフェに飛び込みトイレを借り、アイスクリー
ムを手にバスに乗りこんできた。勿論、1個だ。ポーは食べないものと決
めている。「ビールは?」と聞いたところで『ハッ?』で決まりだ。だか
ら、そんな愚問は言わない。 おじさんの運転する市営バスは、軽やかに海岸線の右側を終点の町ポル ト・モニスに向かった。 左側は断崖絶壁、右側は大西洋の海岸通りを軽快におじさんは飛ばした。 トンネルを抜けたら50mほどの断崖から布引き状の滝が流れ落ち、道路 一面を濡らし、滝の飛沫がフロントガラスに貼りついてきた。タイヤが水 面を切る音に変わった。当然、開けた窓から飛沫が飛び込んで来た。慌て て相棒はカメラをコートにねじ込んだ。『間一髪!セーフ!』と相棒は叫 び、スリルを楽しむ余裕があった。 「けいの豆日記ノート」 《溶岩の町ポルト・モニスで折鶴教室》 12時02分、鋭い自然造形の黒い溶岩岸壁に波飛沫が舞うポルト・モ ニスに着く。予定通りピタリ3時間だった。さすが市営バス運転歴32年 のおじさんだ。相棒はおじさんに頭を下げ、お礼を言って別れた。 おじさんは赤い折り鶴をヒラヒラさせて、<アデウシュ!>さようなら と声を震わせてちょっと寂しげに手を振った。流ちょうにしゃべれればも っともっと、話をしをしてみたいおじさんだった。 市営バスから降りたのは10人足らず。それでも50人以上の観光客が
確認できた。ツアー観光の観光客だろう。観光バスが2台あったからだ。
帰りのバス出発時間を確認した。当然、相棒だった。 その時、大粒の雨が降り出した。振り向くと、相棒はカメラを懐に包み 込み10m先に見える白いレストランに走りこんで行くのが見えた。瞬時 の行動力は相変わらず素早かった。 ピンクの布がかけられその上に、白い大きな紙が敷かれた丸テーブルが 30ほど並ぶ店内は明るく新装開店みたいだ。でも、昼時なのにガラガラ だ。朝からの雨模様では、観光客がわざわざ何もない島の果てまで来る筈 はない日だ。ツアー客は、前々からのバス会社馴染みのレストランに吸い こまれて行くのが見えた。ポーは相棒が駈け込んで行った白いレストラン に走りこんだ。 「けいの豆日記ノート」 窓辺のテーブルに座り相棒はカメラを拭いていた。予備カメラが壊れた
ら撮影取材は終着だ。(予備の予備カメラは持ってこなかった) 窓ガラスに雨音が響くほどの雨脚になった。相棒が帰りのバス出発時間 をメモした小さなノートには4時間後が印されていた。その時間をどう過 ごすか問題だ。この4時間をどう過ごすか、途方に暮れるポーだった。 ゆっくりと一味一味、たとえ注文した料理がまずくとも我慢して味わい、 時間延ばしをして、ここに留まっていなければ4時間は過ごせない。でも、 とうていふたりで1品づつの料理では、持つはずもない。この雨では何処 にも行けないし、行く当てもない。舐めるように食べるしかないと、ポー は覚悟した。 1品目が、来た。あの女性が笑顔いっぱいでトマトスープをテーブルに 置いた。甘酸っぱいトマトの香りが、美味そう。しかも、その量が2人分 ほどある。1人前だと言ったのが、彼女に通じなかったのか。それほど、 不安になるほどの量であった。相棒の反応は早かった。『これ、1人分よ ね?!』 彼女は当然です、と可愛い笑顔で応えてくれた。相棒はホーと 息を抜き、やったね、という笑みをポーに送ってきた。それほど、スープ の量が多かったのだ。スープ用の器がちゃんと互いの目の前にあった。 スープ代400円をふたりで満喫して飲んだ。咽喉越しの風味が絶品だ った。身体が芯から温まってくる気持ち良さがあった。 2品目がスープを飲み乾すと同時に運ばれてきた。フライドチキンだ。
これも大皿に3つのふっくら肉厚のこんやり焼けたチキンに、レタス、ト
マトの輪切りサラダ、マカロニサラダ、人参の細切りの上にオリーブの実
が一つ、それに揚げたポテトの山盛りだった。一皿1200円、美味い。
お腹がいっぱいになる量であった。ぱくぱく食べたので、30分も持たな
かった。やばい。時間がたっぷり残ってしまった。あの娘が微笑んで皿を
下げに来た。『エ ボン!おいしい』と言って、相棒は彼女に折鶴を1羽
差し出した。目を丸くして折鶴を手のひらで受けた。 「けいの豆日記ノート」 その時、あの娘が洒落た服装の30代の女性と若いウエイターを連れて
近づいて来た。彼女は折鶴を差出し、何か言ったが瞬時には理解できなか
った。「折鶴をこの人達にもくれないかって言ってるんだよ」とポーが言
うと、相棒は違うよ、折り方を教えて欲しいと言ってると思うよ、と。 ポルトガルを旅するようになって何十回目の《折鶴教室》が始まった。
客は誰も入ってこないし、この雨だ。まさに、渡りに船の心境だった。
あの彼女は1歳の子供がいるというマリアで、もう一人の女性は店のオ
ーナーのテレサ、ウエイターの名は発音が難しく聞き取れなかった。
テーブルを囲んだ。相棒が手渡した正方形の千代紙を手にし、美しい!
きれい!と声に出して眺めた。 最後の折り、鶴のくちばしを折ると出来あがりだ。1番手はウエイター、
2番手はテレサ、3番手がマリアだった。
マリアの手先は、器用ではなかった。そして、先生は、折った鶴の下に
両手の薬指を当て、両方の翼をそれぞれ親指と人差し指で挟みエイッ!と
声を出して引っ張る。折鶴が立体的に誕生した。生徒達は、ワオーッ!と
歓声をあげた。そして、自作の折った鶴を言われたように摘んで、恐る恐
る、エイッ!と声を発して、引いた。どっと、喜びの歓喜の声が弾けた。
信じられないという、絶賛の声だった。3人の生徒は肩を抱き合った。 2羽目は自習だ。あの彼女に相棒は集中した。飲み込みが遅いが熱心だ った。1歳の娘の目の前に、自分で作った折鶴を何羽も飛ばしたいと、見 せてあげたいと願って、何度も相棒に挑戦した。そして、10羽目で折り 方を習得。彼女は目に涙を浮かべた。オブリガ−ダ!ありがとう!の連発 だった。ポーも彼女が子供に贈りたという熱意に打たれた、始めて見た折 鶴一筋のマリアの愛に感動して、その心の執念に感動し、胸が熱くなって いた。目尻に沸いてくる熱い雫をポーは、必死にこらえたが、まっいいか と、相棒の顔を避け、素直に落とした。相棒が彼女に、そっと千代紙1セ ット20枚を渡したのを左目の端で目撃していた。マリアの頬に一筋の真 珠が滑り落ちていくのをポーは確かに、見た。 「けいの豆日記ノート」 オーナーのテレサがワイングラスを2つ両手に運んできた。この島、マ デイラ島産バナナワインだが、ぜひ飲んで欲しいという。二人は、ありが とう! オブりガード! オブリガ−ダ! を連発して、遠慮なく飲んだ。 ひょうきん者のポーは「マデイラバナナ ヴィーニョ! エ ボン! マデイラバナナワイン!まいうー!」と、吐いていた。オーナーのテレサ に感謝の気持ちが通じたのだろうか? テレサが言った。テーブルに敷いてあるこの紙は、折鶴には出来ないで しょうね、と。1mはある正方形だ。やわらか過ぎるテーブルクロスだっ た。折った。5分で相棒は折鶴に仕上げた。丸テーブルいっぱいの大きな 折鶴だった。テレサは感動し、店の天井に吊るしてもいいか、と聞く。相 棒は微笑んで頷く。テレサは店の看板にすると、相棒の両頬にキスをした。 ありがたいことに、雨もやみ、バスの出発まで10分もなかった。
3時間以上もの、雨宿りをさせてくれた。レストランの名前は今も忘れ
られない。《Vila Baleia Restaurante》ヴィラ バアレイア レス
トラン。心に焼き付いて忘れられない至福の出会いのレストランだった。 *「地球の歩き方」参照*
終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2009年4月掲載 |
掲載済み関連写真===≪ポルトガル写真集≫2006年版旅日記
1
・2
・3
・4
5
・6
・7
・8
・9
・10
・11
・12
・13
・14
・15
・16
・17
・18
ホーム ★ ポルトガル豆知識 ★ プロフィール ★ ポルトガル写真集 ★ 写真展案内 ★ ポー君の豆日記 ★ 今月の1枚 ★ リンク ★