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(リマ川の女王のヴィアナ・ド・カステロ)
Portugal Photo Gallery --- Viana do Castelo
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☆ヴィアナ・ド・カステロの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
ポルトのサンベント駅から列車で1時間半から2時間のところにある。
ミーニョ地方はポルトガル発祥の地として知られている。
そのミーニョ地方の中心としてあるのがヴィアナ・ド・カステロである。
リマ川が大西洋に流れ込む河口に開けた、別名「リマの女王」と呼ばれる町である。
ヴィーニョ・ヴェルデというワインの産地でもある。
「ポー君の旅日記」 ☆ リマ川の女王のヴィアナ・ド・カステロ ☆ 〔 文・杉澤理史 〕
トリズモ(観光案内所)のマークを発見。
そこで地図と資料をもらい、青空が広がるポルトガルの北部ヴィアナ・ド・カステロの町に相棒の写真家が飛び出した。
2004年4月22日(木)の午後だった。
相棒は青空が好き。光と影のバランスが好きだった。もらった地図を凝視。頭に叩きこむ。
地図には、めっぽう強かった。方向音痴のポーには信じられない技だ。
相棒はまさに《犬》だった。 「けいの豆日記ノート」 地図が頭の中にある相棒はカメラ片手にスタスタ先を歩く。歩幅が狭いのに早い。 駅まで5分もかからない。線路をまたがる通路を渡ると、北側の大きな建物に通じていた。 出来立てのショッピングセンターだった。 天井の高い広い通路の両側には、レストランやスポーツショップ、ファッション店に色とりどりのアイスクリーム店、 携帯のボーダホンショップなどがゆったりした空間を飾っている。 観光客はいない。地元の若者の姿も見当たらない。 この小さな町の人たちはこの空間についていけるのだろうか、と不安になるほどの異空間だった。 階下はバスターミナルになっていた。 もらった地図には載っていなかったが新名所になるのだろう。 「けいの豆日記ノート」 駅の北側に出来たショッピングビルを出ると、東西に4月25日通りが走り、その向こうに大きな病院が見える。 その通りを右に10分程歩いていくと、山に向かって廃線になっているケーブルカーの線路がある。 (2006年に再開されるという話もある) 更に進むと、小さな古びた看板があった。 [Tempio de Santa Luzia]と、うっすら読めた。 そこから山に向かって道幅2mほどの石段がまっすぐ伸びていた。 両サイドは民家の白い塀で囲まれている石段だ。 『さっ、何段登るのかな〜、行くぜ!』と写真家。《犬》は威勢がよかった。 写真を撮りながら、ルンルン先へ先へと登って行く。 『ポーの姿が見えないほど先に行くなよ』約束ごとだった。 何かあったら、助けられないからだ。〈ポーは、用心棒なのだ。〉一段また一段と数えながら登った。 200段で小休止にした。『とまれ〜!』と上に向かって叫ぶ。 相棒が、足を止めるのが見えた。 『大丈夫〜う?』と声が上から、降りてきた。 まだ半分も登っていない感じだ。汗が頬をつたって落ちる。5分休んで出発。 「けいの豆日記ノート」 坂の両サイドの塀が林に変わり、石段も丸太で組んだ土段に変わり急勾配になってきた。 青い空に白い雲がゆったりと遊んでいる。 そして、巾5mほどのアスファルト道路に出た。 タクシーが目の前を走り去っていった。 タクシーなら駅から頂上まで10分ほどか。 往復8ユーロ(1040円)ほどだが、写真を撮るのが目的の旅。 歩いているからこそ、人との出会いが待っている。 相棒が道路脇の石の手すりに座り、日本から持参した好物のゴマ煎餅を食べていた。 『ポーも、一枚、食べる?』 「いいよ、疲れたよ」 『ここまで何段ぐらい登ったのかな〜?』 「538段」 『エッ、数えながら登って来たの!』と笑い『ポー、らしいよ』と頷いた。 「けいの豆日記ノート」 道路の先に巾が1mほどの石段が待っていた。頂上に近い雰囲気があった。 そして、673段で登りきると目の前にサンタ・ルジア教会の雄姿が青空を背景に浮かんでいた。 45分かかったが疲れが吹き飛ぶ嬉しさだった。 標高249mの山の上は公園になっていて、そこからの眺望は息を呑む美しさだった。 ヴィアナ・ド・カステロの町が青く眼下に広がっていた。 駅前からはるか先にキラキラ見えた水面はリマ川で、右手に青く見える大西洋に注いでいた。 ここは河口の町だった。 町が小さいので地図みたいにはっきり見えた。綺麗な町だった。 河口だからリマ川が広く、大西洋の輝きが手に取るように迫って、この俯瞰はいい。 町の何処からでも見えるサンタ・ルジア教会の内部は高さ57mのドームで、天井はフレスコ画。 そしてステンドグラスの天窓が周囲を飾り、そこからの柔らかい日差しが内部を優しく照らしていた。 ステンドグラスからの光の色合いが内壁に投影され、神秘的であった。 「けいの豆日記ノート」 ゴオオ〜ン!と頭の上で音が響いて鳴った。 5時を告げる鐘の音だった。 この鐘音は下の町に響き渡っているに違いない。 町の人々は、この鐘の響きで毎日の生活を刻んできたと思う。 帰りも、また673段を一段一段降りた。 相棒はシャッターを切りながら狭い石段を気持ちよさそうに下っていく。 そして、歌っていた。 ♪こ〜こは ど〜この細道じゃ♪ 何故か、この歌がこの場の雰囲気に合った。 相棒のつぶやくような歌声が不思議に心に響いて、残った。 帰りは20分で小さな看板まで下りた。♪行きは よいよい♪の逆だった。 「けいの豆日記ノート」 いつものように、ショッピングセンターのスーパーで夕食を買う。 食生活を知るには、地元のスーパーが1番である。 などといって、ほんとは節約のためなのだが。 赤ワイン1瓶1・72 レタス1個0・11 キウイ2個0・27 トマト2個0・26 シーチキン1缶0・55 フライドチキン0・67 水0・39 マヨネーズ1・09 計5・06ユーロ(658円)。これが、今夜の夕食代だった。 ちょと、泣ける淋しさ。でも、山盛りのサラダは泣けるほどうまい。 赤ワインに、相棒お手製のサラダで腹いっぱいだ。 サラダは旅を続けるエネルギーになっていた。 ポルトガルは、果物も安くて美味しい。 オレンジ、メロン、イチゴなどそのまま食べれるのでデザートにちょうどいい。 日本じゃ高くて食べないメロンの半分切りをスーパーで買ってスプーンで食べる。 なんと贅沢なことだろう・・・ 熱いシャワーが一日の疲れを流してくれる。 万歩計を見た。27308歩。今日もよく歩いた。0歩に戻し、眠った。 「けいの豆日記ノート」 翌朝、4月23日(金)。7時に太陽が昇った。 窓からサンタ・ルジア教会が朝日に照らされて神々しく見えた。 思わず、手を合わせてしまう。(思わず、胸に十字は切れない)さあ、今日も元気で二万歩だ。 8時のモーニング。食堂のドアのノブを回したが開かない。『ウッソ〜!』素顔の相棒の雄叫びだ。 トントントンと、入り口のガラスを叩く女性がいた。ここを開けて!と言っているらしい。 何かしゃべっているが分からない。 相棒がガラス越しに女性と手話。正規の手話ではない。ジェスチャーゲームを見ているようだ。 相棒がポーに指示をした。 受付カウンターの左の引き出しに鍵の束が入っている。それで、ここを開けて欲しいと言っているからと。 ポーは確かめた。あった!鍵の束が確かに。相棒のジェスチャー解読術に乾杯だ。 鍵穴にひと鍵ひと鍵、差し込み回すが開かない。 女性はそんなはずがない、とガラス越しに叫ぶが開かないものは開かない。 まっ、まっ、まっ、と相棒がガラス越しになだめる。 そしてまた、二人のジェスチャーゲームが始まった。 頷いた相棒は、カウンターの横の壁に貼ってある電話番号の上から11番目をダイヤルした。 つながった。 そして、相棒は受話器に向かって叫んだ。『コケコッコ〜!』と。 奥の部屋から髪がボサボサの青年が飛び出してきた。寝坊したのだ。 青年はポケットから出した鍵で開けた。 怒った女性と青年のやり取りが続く。 その時、日本語で『いいから早く食べさせてくれない!』と一喝したのは勿論、相棒だ。 湯を沸かし食事の準備が出来るまで20分はかかると判断。 『町を散歩してこよう、ポー』もう、入り口のドアを開けていた。 レプブリカ広場まで5分とかからない。噴水が朝の光できらめく。 鳩の群れが大きく広場の上空を旋回している。朝日をさえぎった鳩の影が石畳を洗うようだ。 カテドラル(大聖堂)も陽を浴びる。 14世紀頃に建てられたというゴシック様式の正面に重みを感じる。 港には漁船が並ぶ。船体にきらきら輝く波模様が反射され揺れている。 相棒の写真家がファインダーをのぞく。その横顔がなごんで見えた。 食堂に戻ると、あたたかいモーニングが待っていた。コーヒーの香りがいい。 あの女性も笑顔で焼きたてのパンをいっぱい目の前に運んでくれ、コーンフレークも牛乳と出してくれた。 サービス満点。青年も髪を整え、頭を下げ恥ずかしげに去っていった。腹いっぱいの朝食だった。 「けいの豆日記ノート」 ヴィアナ・ド・カステロ駅でキップを買い、ホームで列車を待つ間、相棒は折り鶴を始めた。 写真を撮らせてもらったときのお礼の《折り鶴》だ。 色とりどりの千代紙から1羽また1羽と相棒の手の中で生まれる折り鶴。 目を輝かせる3人の娘(高校生ぐらい)がジーと相棒の手元を追う。 素早く誕生する鶴に歓喜の瞳が弾ける。 列車が来た。相棒は立ち上がり、3人の娘に1羽ずつあげた。 オブリガーダと可愛い声が嬉しそう。折り鶴と一緒に手を振って列車に消えた。 『あらッ!』と相棒。朝食で偶然会った日本人の中年夫婦が隣の車両に乗り込むのが見えた。 『さあ、バレンサ・ド・ミーニョまで列車を楽しもうか、ポー』 ガイド本をバスに置き忘れ、しかもガイド本にも載っていない国境の町に向かった。 *「地球の歩き方」参照*
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