「ポー君の旅日記」 ☆ 国際的リゾート地ラーゴス ☆ 〔 文・杉澤理史 〕
ポルトガルに来て5日目、2月9日(日)の朝は早かった。
最南端・アルガルヴェ地方の中心地ファーロに入って2日目の朝だった。
まだ薄暗い町に相棒の写真家が飛び出したのは6時。
安いホテル・オセアノから目の前のドン・フランシスコ・ゴメス広場の街路灯で2カット、広場を横切ったところにあるアルコ・ダ・ヴィラ(城壁に囲まれた旧市街への入り口)の建物で5カット、
更に旧市街で8カット、開く前のレストランで3カット、相棒はシャッターを切った。
2月でも日中は暖かかったが早朝はやはり冬、底冷えにポーはちょびっと震えた。
「けいの豆日記ノート」
どうしても再挑戦したかった。生まれて初めて出会った〈コウノトリ〉を撮りたかった。
昨日は思うようなアングルからキャッチできなくて、それが悔しくて!そんな思いを引きずっていた時、夕べ、タビィラ駅構内のベンチでパンをかじりながらポーが言った。
「明日は早起きして、サグレスに行く前にコウノトリを見ていくか」と。この一言は、身に染みたよ。
頼りないボデイガードだけれどさ。ポイントは押さえてきた。
コウノトリの巣は街路灯やエントツなど高いところにあった。
そして、必ず2羽が寄り添っていた。羽を広げると鶴に似ていた。
飛ぶ姿は壮観だったよ。朝からいい写真が撮れたので、今日一日が楽しみだ。
ホテルに帰って7時半からのモーニングをお腹一杯たべた。
9時発の列車に間に合う。ファーロから10分。車窓にオレンジ畑が連なる。
今が収穫時みたいだった。
「けいちゃん、次の駅で降りないか」『降りたい』話は早かった。
トーネス駅前広場は閑散。次のラーゴス行きの時刻を調べてきた相棒は「オレンジ畑って何処に・・・」
とあたりを見る。駅前から道が延び、両側に民家が連なっていた。空は快晴。人がいない。
オレンジの香りもなかった。線路伝いに戻れば畑にたどり着くはず。でも、その道がなかった。
「まっ、いいか!」と相棒は切り替えが早かった。
10時5分の列車に乗り、11時5分にラーゴス駅に着いた。
駅舎の前はマリーナ、その運河にかかる橋を渡るとバスターミナルがあった。
相棒が調べてくる。(けいちゃんは数字に長けていた)次のサグレス行きは12時40分。
一時間半の間に昼食をとることにした。運河沿いのデスコブリメント通りを大西洋に向かって歩く。
暑い。コートを脱いだ.左側が運河、右側は商店が並ぶ。
運河は大西洋からマリーナに戻るヨットでにぎわう。
リゾート地気分だ。冬着を着込みリックを背負って,汗を拭き拭き歩く姿は異邦人であった。
場違いの世界に来た思いだった。
バスターミナルから近いレストランに入る。
1階はカウンター、ワインを立ち飲みする人、2階に赤い布がかかったテーブル。
ミックスサラダ一つ、グリルチキン一つ、ビールとスプライトで10・05ユーロ(1306円)。
窓からヨットが行き来するのが見えた。料理が来るまで相棒は写真を、ポーはメモ帳に記録を刻んだ。
だが、待てどなかなか料理が来ない。
サグレス行きのバス時間が迫る。
相棒が階下への階段を下りていった。「う〜ん、も〜う!」忘れていたらしい。
『もう、いらないから、帰る!』って言ったけれど、通じないみたい、という。
しょうがないから、今日はラーゴス取材にして、サグレスは明日にしよう、で即、決着。
個人旅の良さ、ということで、チョ〜ン!ゆっくり昼食をいただいた。
「けいの豆日記ノート」
石畳の路地が幾筋も延びていた。どの路地もレストランばかり。
今は冬場で観光客は少なかったけれど、シーズンになればリゾート観光地ラーゴスは満杯だろうな。
路地テラスで食事をしているランニングシャツの人は北欧からの観光客だと思う。
暖かいというより暑いよ。また一枚脱いだ。
黄色い派手派手のシャツはちょっとセンスがなかったかなと思う。
だって、暑さで脱ぐ羽目になるとは想像もしていなかったものね。
ハハハ・・・だよ。町の周りは城壁に囲まれている小さな町だったけれど、二時間近く歩き回った。
飽きない。殆どの路地を歩いた。楽しかった。
ラーゴスは歴史の町だった。
紀元前300年ころから大西洋や地中海交易の繁栄が続き、ヨーロッパとアフリカの接点としての重要な役目をしてきた港町だったと言う。
ラーゴス郷土博物館に1・95ユーロ払って、入ってみた。
博物館と続いてのサント・アントニオ教会が見ものだった。
18世紀建立の豪華なバロック様式の装飾ときらびやかさ、それにアズレージョが目を引いた。
城壁を出ると目の前に青い大西洋の海があった。青い空に青い海。
バンデイラ岬要塞がある海辺に下りてみた。透き通る海水はまだ冷たかったが心地よかった。
「けいの豆日記ノート」
水着ではなくパンツで水遊びしている老夫婦がいた。
まさか、この時季に海に入れるとは思ってもいなかったはず。
この人たちも北欧からの観光客だと思う。
水着を用意している人もいる。かなりの巨体でも平気なのが、ある面うらやましい。
若い頃はスマートな人が多いけど、年齢とともに大きく膨れていくのは、ヨーロッパ人の特色だよね。
シントラの城跡で会った若い夫婦も太陽に素肌をさらしていた。スウェーデンの人だった。
ラーゴスで2つドジったよ。
ひとつ目は赤いエントツの上にコウノトリを発見して細い路地を入って行ったら、綺麗なお庭が広がっていて
どんどん、奥にいってしまって、途中でそこは軍隊の敷地の中とわかり、外に出られなくなってあせった。
大きな門の脇に守衛の小屋があったので、身振りで説明してやっと外に出してもらえた。
ふたつ目はレンズのラバーとキャップを落としてしまった。
カメラを出し入れしていて緩んでいるのに気がつかなかったんだね。
ポーと20分ほど路地を探し回ったけれど見つからなかった。ないと不便なんだよね。
撮影には直接には影響ないけれど、レンズにキズつけたらおしまいだよ〜ん。
17時15分のラーゴス発に乗って、目が覚めたら終点のファーロだった。
19時を過ぎていた。今日も一日よく歩いた。
万歩計はポーが22602歩,写真家は23117歩だった。
|