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(漁師町・セジンブラ)
Portugal Photo Gallery --- Sesimbra

セジンブラ1
素朴なリゾート地

セジンブラ2
観光船

セジンブラ3
レストラン

セジンブラ4
店頭の昼ね

セジンブラ5
路地はオープンカフェ

セジンブラ6
三輪車

セジンブラ7
指定席

セジンブラ8
イワシの炭焼き

セジンブラ9
移動遊園地

セジンブラ10
保育園

セジンブラ11
なになに

セジンブラ12
マネキン

☆セジンブラの説明 (写真の上をクリックすると大きな写真が見れます。)☆
リスボンから、気軽にいける素朴なリゾート地である。
アラビダ半島の南岸、アラビダ山脈を背後に控えた漁業の町である。
夏には、青い海と降り注ぐ太陽を求め、リスボンっ子たちが訪れる。
新鮮なシーフードを味わいに訪れてみたい町である。

「ポー君の旅日記」 ☆ 漁師町のセジンブラ ☆ 〔 文・杉澤理史 〕

  

 今日、2004年5月5日(水)は日本では〈子供の日〉だ。 当然、首都リスボンの空には鯉のぼりが舞う姿はない。
ポルトガルに来て20日目の朝は、雨が落ちてきそうな空模様であった。 明日、早朝5時には、宿を出て空港に向かい8時前の飛行機に乗り帰国しな ければならない。だから、今日は忙しい。

 モーニングもそこそこにロシオ駅から地下鉄に乗り〈在ポルトガル日本大 使館〉に向かった。4回目の訪問だったが時間が早すぎ20分待った。9時 受付開始。ビルの受け付けカウンターでパスポートを渡し、エレベーターで大 使館フロア−で降り、更に受付でカメラを渡し、荷物は赤外線コンベア−装置 を通された。狭い資料室で館員の野口さんを待った。質素な部屋だった。 笑顔で現れた彼女は1年前より痩せて見えた。来年は日本に戻ると言う顔 が嬉しそうには見えない。3年で移動だ。早過ぎると思う。人員も少なくデ スクワーク多忙でポルトガル各地を見て廻われない、だからふたりが羨まし いとつぶやいた。 水戸黄門様みたいに歩きまわって、今のポルトガルの姿を知るのも大使館 の勤めだろうに。3年じゃ物足りないと思う。
 『いつもごめんね、こんなものばかりで・・・』 相棒が袋を恥ずかしげに野口さんに差し出した。袋の中身は、かりんとう、 ゴマせんべい、サキイカ、タラカマ、梅干など(勿論、封は切ってないよ)。それに、 醤油入り金魚(弁当に入っているアレ。30ケぐらい持参していた残り)に ティシュ(駅で配っているアレ)。日本に持ちかえってもと思い帰国前に寄 っては、無理矢理いただいてもらってきた。残り物で何時もごめんなさい。

 「けいの豆日記ノート」
 ポルトガルの日本大使館は、近代的なビルの中にある。 入り口でカメラもとられてしまうので、写真が撮れない。 カメラくらいいいのにねえ。 ポルトガルにも菓子はたくさんある。 ポテトチップスのたぐいか、甘い菓子が多い。 安くておいしいのだけど、甘すぎるものが多い。 だから、硬い歯ごたえのあるしょうゆ味のせんべいが食べたくなるんだよな。 小袋になっているものは、少しだけ、持って歩くのにちょうどいい。 で、いつもたくさん持っていき過ぎて、残ることになる。 ケチケチ食べているからかなあ。

 ポルトガルのシャンゼリゼと呼ばれているリベルダーデ通りはネクタイ族 が多いビジネス街。幅90m、長さ1500mのこの通りにはプラタナスが 生い茂り散歩道としてもリスボン市民を楽しませていた。 大使館を出て新緑のプラタナスを見上げながら広い歩道を下る。
 『楽しみが1つなくなっちゃったね。野口さんに会うの楽しみだったのにね』  相棒の思いだった。 『カステラの店に行ってみようか』 急にふってくる。(でも今日は行きたいところは何処へでも行こうと決めた) テレビ番組で紹介していた日本人経営の店だった。 コメルシオ広場の近くにある〈Castella do Paulo〉というカフェ。 長崎でカステラ修行とした菓子職人パウロさんと、 ポルトガル菓子研究家の智子さんが経営するティールームだ。 大使館から2kmを歩いた。地下鉄だと3駅とちょっとある。(ロシオ駅か らでも800mはある)30分の散策だ。 リスボンで頑張る日本人の姿が見たい、撮影したいという写真家の望みであった。

 運がいいのか相棒(犬)の勘がさえているのか、路面電車沿いに間口は 狭いが奥行きのある洒落たカステラ専門店のカフェを難なく見つけた。 店内はサラリーマン客でいっぱいだった。 日本の〈モーニング喫茶〉的雰囲気があった。客には日本人の姿はない。 この地に溶け込み、この地の人々の憩いの場として定着していると判断した。 相棒は紅茶とカステラを頼む。286円だった。日本人の女将さんに事情を 説明し、撮影の許可をとる。  〈ポルトガルカステラ〉作りに苦労してあみ出し自信をもってこのリスボンで 念願の店をオープンさせたということだった。 カステラを相棒からひと切れもらって食べてみた。何処かで食べた味だった。 虎屋のカステラで知った味でもない。このコク、このふっくらさ、このこの繊 細な甘さ、この歯ざわり、このとろけぐあい・・・。

 この、ポルトガルカステラの味覚を思い出した。 岐阜県の恵那市岩村町に今もポルトガルカステラを寛政8年(1796年) からその技を守り続けている店がある。松浦軒本店だ。今でも城跡が残る岩村 藩時代、長崎に医師の学問を学びに行っていた藩の若者がカステラの旨さに感 動し藩にその技を持ち帰ったそうだ。それが岩村に代々受け継がれ今日にいた っていた。 そのポルトガルカステラの味をポーが知ったのは20年前だった。 その味覚がリスボンでよみがえって来た。あの味、あの旨さだった。 帰り際[愛しのポルトガル写真集]を撮影のお礼にもらっていただく。 〈パウロ〉の女将は店のお客さんに見ていただきますと喜んでくださった。

 「けいの豆日記ノート」
 カステラ・ド・パウロは、日本のテレビでも見たことがあった。 どんな店なのか、見てみたかった。 カステラは、おいしいに決まっている。 日本の喫茶店に来ているような錯覚におちいる。 テーブルの上も、カップも、ポルトガルのカフェとは、ぜんぜん違う。 細かいところまで心遣いがあるようだった。 がんばっている人を見ると応援したくなるよね。

 店を出たら薄日が射してきた。 ここでも、相棒のひらめきで次ぎの行動に移った。なにせ、ポルトガルを散 策するのは今日しかない。 『セジンブラに行ってみようか』   午前11時だ。好きなようにさせたかった。来年も来る確約はないのだから。 ポルトガル最後の日は大西洋の海を相棒は観たかったのかもしれない。 大西洋の海水浴場でもあり、ポルトガル漁獲高のトップを競う漁業の町が 〔セジンブラ〕であった。テージョ川にある船着場までカステラ喫茶パウロか ら10分もかからない。ひとり0.6ユーロ(80円)。対岸のカシ−ジャス の町に渡った。そして、バスで一時間、岩が目立つ山を越えて目前に青い海が 広がり、その手前に斜面の町がある。セジンブラだった。

 アラビダ山脈を背景にした町であった。 バスターミナルから大西洋までは眼の先の距離だった。 海に向かって坂道の石畳を歩いて行くと小さな公園があり、黄色い花が咲く 樹木の廻りを緑色のベンチが囲んでいた。ここでも、最初に出会うのはおじい さん軍団。おばあさんに比べおじいさん達は少しばかりどこの地でもお暇なよ うだ。 ベンチで語らうおじいさん4人を撮影した後、オブリガ−ダ!と礼を言い、 何時ものように相棒はひとり一人に折り鶴を差し出した。 これは鳥か? グロウ?鶴は見たことがない! コウノトリに似ているのか! 日本から来たのか! ナカダは知り合いか? いい話し相手が舞い込んで来た とばかりにおじいさん達に捕まり、相棒はてんてこ舞いだった。この場を治め るにはこれしかない。ハーイ!こっちを見てー!ハーイ、チーズ!パシャッ!  おじいさん達の笑顔と相棒の笑顔の記念写真がフイルムに焼きつき、残った。

 「けいの豆日記ノート」
 リスボンから、サド川を越えて向こうの半島には、以前に行ったことがある。 セトゥーバルとパルメラだ。この2ヶ所は、近くなので両方に行くことができた。 セジンブラは、離れているので、行くことができなかった。 だから、1日余裕ができたら、行ってみたいと思っていた。 この渡り船も安くていいと思う。 対岸からのリスボンの町を見てみたいと思っていた。 前回いったのだが、天気がいまいちできれいに見えなかった。 今回もダメだった。 また、今度、挑戦しよっと。

 公園の近くにちいさな教会が見えた。 20人ほどのおばあさん達が正面祭壇にある十字架に張付けられた等身大の キリスト像に向かって祈っていた。ぼさぼさの長い髪と髯は黒く上半身キズだ らけの裸に腰には布が巻かれ生々しい姿であった。こんな祭壇のキリスト像は 初めて見た。写真家も同じ気持ちらしく、キリスト像に釘づけだった。
 ボンバルデス広場の先は紺碧の大西洋だ。 広い砂浜にサンティアゴ砦が突き出している。牢獄として使われていたそう だ。その砦に上ると、前が海、背後が斜面に連なるオレンジの屋根に白い壁の 民家が見える。まるでこの砦は海に突き出した展望台であった。 この美しい浜は夏になると海水浴の人々で賑わうらしい。

 腹が減った、2時。ボンバルデス広場にはレストランが並ぶ。 高そうなので路地裏に入ったら、炭火で魚を焼くおじさんがいた。 煙に、魚を焼くあの新鮮な香りが混じり、鼻に染みこんできた。 久しぶりのジュウジュウと焼ける音にメロディーすら感じた。 ♪さかな、魚、魚を食べリャ♪のCMの唄はまだ当時なかったが、そんなメ ロディ−が聞こえてきそうな雰囲気があった。勿論、相棒のシャッター音が鳴 っていた。
 おじさんの店はレストランと書いてあったが大衆食堂だった。 店内はぎっしり長いテーブルが並び、奥の客が出るときは、その列の人は食 事を止め、立ち上がり、送り出さなければならない狭さだった。 観光客より地元の人が多い。ワインのビンが乱立だ。2時なのに。 鰯の塩焼きを一皿頼んだ。大きいのがこんやり焼けて7匹も輪切りのレモン が添えられて出てきた。焼けた皮がジュジュと音をたててだ。ガブッと食らい つく。塩加減がいい。さすが漁師の町。新鮮な魚だ、まいう−ッ!
 会計になって相棒が驚く。 飲み物を入れて、20ユーロ(2600円)だった。相棒はレシートを請求。 紙に鉛筆で書いたメモだった。鰯の塩焼きが2皿と書いてある。違う!一皿だ! と相棒が訴える。おばさんはハハハと笑い、一皿に訂正。でも、まだ高い。 頼んでいないのにサラダとポテトが別料金で書いてある。 今までの店ではサラダとポテトは添え物で付いていたので、これはおかしい とメモ紙を指差して相棒は訴える。なかなかの迫力であった。 20ユーロが13.5ユーロ(1755円)になった。 845円の勝利だった。  『言ってみるもんだね。しゃべれなくても通じるもんだよ』 相棒のお手柄であった。

 「けいの豆日記ノート」
 海岸のすぐ側にあるおしゃれなレストランは、高い。 入り口付近のケースに並んでいる魚が大きい・・・ 大きいと高いというのは、違うような気がするけど。 1匹いくらでなく、100gいくらで、計って値段を決めている。 料理方法は、どの魚も炭火で焼くだけである。 ウナギもぶつ切りにして焼くだけである。 素朴な味がいいのだろうけど、ウナギは蒲焼がいいなあ。 しょうゆを発明?した人は、すごいと思うよ。
 狭い路地にあった大衆食堂は、見た目、安そうだった。 だから、狭い店内でも文句はいえない。 大衆食堂だけあって、レシートなどあるわけがない。 紙にメモするだけで、アバウトそのものだ。 きっと、知らない人なら、言われるままに支払っていたと思う。 でも、貧乏人には、とんでもない額だった。 言葉なんて話せなくても、言っていることは、わかるものだ。 安くはなったけど、これでも高いと思っている。

 バスターミナルに向かう途中に幼稚園があった。 周囲を高い金網で張り巡らされた庭で子供達が遊んでいる。大切な子供を 預かっているのだから当たり前なのだが、日本の場合はここまで徹底してい ない。治安のいいポルトガルでこの配慮だ。日本もちょっと前までは治安の いい国だと言われていたが、最近は子供がらみの事件が多すぎ心が痛い。

 バスに乗ってフェリーに揺られて、リスボンに戻ったのは夕方5時過ぎだ った。ポルトガル最後の夕食はリスボンの老舗の日本料理店〈Novo Bonsai〉 で食べることに決めていた。 相棒の先輩Yamasugaさんには明日早朝帰国するので7時に横地さんの店に 行っていると携帯の留守電に報告しておいた。
 7時に店に入った。日本人が一人、3組のカップルはポルトガル人の客が いた。北海道から来たという女性は毎晩、もう5日も来ているという。ご飯 とうどんがないと駄目だと。一人でレストランに入っても一皿の量が多いか ら残してしまう。ここの料理なら安心して好きなものが食べられるからと。
 相棒はちらし寿司(10ユーロ)、ポーは勿論カツ丼(8ユーロ)。 日本でもなかなか食べれない美味しさだった。今回はおご馳走ではなく現 金を払った。その時、入り口の戸が開きYamasugaさんが現れた。明日朝は早 いのね、またいらっしゃいね。20歳も年上の先輩は後輩の両手を握ってや さしく言った。その手はとてもあたたかったと相棒は石畳の坂道を下りなが ら言った。リスボンの夜空に月が浮かんでいた。    

                                          *「地球の歩き方」参照*               

終わりまで、旅日記を読んでくださり、ありがとうございます。 次回をお楽しみに・・・・・・・2007年11月掲載

 『2004年版 ポー君の旅日記』は、今回で終了です。ご愛顧ありがとうございました。
 次回からは、『2006年版 ポー君の旅日記』をお送りいたします。
 はやく出したかったのですが、話の流れもあり、遅くなって申し訳ありませんでした。
 次回からもよろしくお願いしますね。ガイド本にない町がたくさんでてきますよ。

路面電車のリスボン ・・・ポルトガル写真集・「路面電車のリスボン」はこちらからどうぞ

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